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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
U 4.25.PM6:57
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この体は、そう呼ばれていたのか。別にどうでもいい。何と呼ぼうが、好きにするが良いさ。」
 それはそう言うや嘲笑した。いや、炎で顔はよく見えないが、何故だがはっきりとそれが分かるのだ。
 こいつ…田邊じゃない。だが、姿は彼のものだ。一体…どうなってるんだ…?
「いやぁ…面白いよ!この体の男といい君といい…何て人間は面白い!」
「何が面白いって言うんだ!」
 俺は炎の向こうへと怒鳴った。メスターラー氏はこの状況に、ただ茫然としていたが。
「あははははは…!怒れ!もっと怒ればいい!お前、この男の心を薄々気付いてたんだろう?お前はそれで、この男を利用してたんだよな?私が全部奪っちゃったけどさ!」
 そう聞こえたかと思った刹那、いきなり目の前に田邊…だった者が現れた。
 メスターラー氏は、いきなり現れたそれに飛び付こうとしたが、彼は得体の知れない力に吹き飛ばされ、そのまま壁に激突して意識を失ってしまった。
 俺はそこから動けず、ただ目の前のやつと対峙していた。
「俺が…何を知っていたって…?」
 恐る恐るやつに問う。
 俺は身体中から嫌な汗が吹き出し、口は緊張で渇いた。やつは今までの霊とはまるで違い、圧倒的な威圧感を俺に与えていた。
 俺が問うと、やつは田邊の顔でいやらしい笑みを見せ、耳障りな声で笑いながら言った。
「こいつがお前と一緒にいた理由さ。」
「それは…河内が…」
「違うなぁ。そんなもんが理由なら、とっくに離れているさ。で、答えはぁ?」
「…お前に答える義務は無い!」
 俺はそう言い放って後退りした時、今度は真後ろから至近距離で声が聞こえた。
「答えはぁ?」
 俺はゾッとした…。こんなのは慣れていたはずなのに…体が硬直してしまった…。
 田邊の体ということもあるが、今まで戦ってきたどんな霊よりも強い。
「時間切れ!こいつがお前を愛してたからだよ!」
 何とも間抜けた声で馬鹿にした様に言った。そして笑い転げ、さも喜劇でも見ているようだった。
「何が可笑しい!」
「だってぇ、男同士なんてエグいじゃん!気持ち良いことしたかったんだってよ!ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 狂ってる…どうして彼がこんな…。
「どうしてかって?」
 俺が唖然としてそう思った時、やつは突然笑うのを止めてそう言ったのだった。
 だが…その顔は狂喜に満ちていた。
「それは…」
 やつが嬉々として何かを言おうとした時、突然表情が変化して苦しむように踞った。そして、やつは苦しみに耐えるようにして言った。
「先生…逃げて…。」
 その言葉を聞いて、俺は目を見開いた。
「田邊…田邊か!?」
「逃げて…!」
 紅く揺れる炎の中、涙を流しながらそう言う。その顔は、まるで全てに絶望しているかのようで…俺にはどうしていいか判らなかった。

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