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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
T 4.13.AM10:14
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 先ず、トービアスは予めどの様に工事をするかを王へ話したと考えられ、資料にはないが、それが革新的なものだったと推察される。そうでなければ王に一蹴されるどころか、不敬罪で処刑されかねない。
 トービアスはその才能の他、幸運なことがあった。隣の地方を統治していた侯爵と顔見知りだったのだ。
 古文書にはっきりした記述はないが、侯爵が若い時分、旅先で病に冒されたのをトービアスが治したらしいのだが、彼がどうしてそんな知識があったかは定かではない。ただ、その時からずっと親交があったことだけは記されていて、それがトービアスにとっては幸運だったということだ。
 しかし、いかな親交があろうとも統治者たる侯爵に、おいそれと農民風情が会えるわけはない。王への嘆願も先ずは書状を幾度と届け、それからやっとだったのだ。
 だが、侯爵との面会は三日と掛からなかった。王が直々に侯爵へと書簡を認めていたからだ。そこにはトービアスが示した内容も書かれ、それを読んだ侯爵は直ぐに面会する許可を出したとされる。まぁ、これにも裏があったようで、侯爵は王へ貸しを作りたかったようだ。また恩人たるトービアスへ恩を返す機会と考えたかも知れない。とすれば、侯爵にとっては願ったり叶ったりと言うわけだ。そこで侯爵は人足も自分の土地から手配し、諸費用の半分までも自分から出したとされる。侯爵は政治的駆け引きが得意だったらしく、他国との戦争を避けていたため、人員も金も十分にあったのだ。
 そうして全てを一任されたトービアスは、直ぐ様仕事へと取り掛かり、それは大成功だったと記録にはある。そもそも、この土地が王の直轄でなければここまで酷くはならなかったのだが、以前治めていた公爵が王を裏切ったためにこうなったのだ。王にしてみれば弱り目に祟り目だっただろう。
 そうしてトービアスは伯爵位を受けることとなるが、ここにも裏があり、どうやら民衆をまとめあげて工事を成功させ、その上、王と民との間を取り持って和解させた彼を、王は自分の風避けとしたかったようだ。侯爵とのこともあり、この驚くような待遇でトービアスの偉業に報いたのだろう。
 とは言うものの、これさえ幾つかの古文書を合わせて得た答えなため、絶対とは言い切れないのだがな…。
「なるほどね…。農民が爵位を得るなんて考えられなかったけど、そうした背景があれば別か…。」
 奏夜は尚も不満が残る感はあったが、そのことについてはもう聞いてこなかった。資料はこれだけなのだから、これ以上の詮索は無駄と判断したのだろう。
「それで、ゴッドフリートと何の繋がりが?そもそも、伯爵家であれば一族の墓所があるはず。なぜ無理してまで教会を建てる必要が?」
 奏夜はそう言って話を戻した。その問いに、宣仁叔父は顎をさすりながら答えた。
「ゴッドフリートの妻はな、一族から除外されたんだ
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