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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
T 4.13.AM10:14
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でも見たかの様な表情をして返した。
「…じゃあ、遺体が目当てってことか?それは…有り得ないんじゃないか?そんなもん盗み出して、一体何しようってんだよ。」
 奏夜の問いに、俺と宣仁叔父は互い顔を見合わせて溜め息を吐いた。そして、それに対しては宣仁叔父から返した。
「それがだな…聖マタイ教会の古文書に、魔女裁判の記録があって…そこに伯爵夫人の名前が挙げられいたんだ。」
「魔女裁判…って、魔女狩りって言うやつだろ?でも時代が…」
「そこなんだが、この地方だけでなく、少なくとも幾つか時代を異にして行われたようだ。この地方に伝わる最も古い伝承によってな。」
「…伝承?」
 奏夜は眉を潜め目を細めた。俺は宣仁叔父に代わり、そんな奏夜へと伝承のことを話した。
 一般的に「魔女裁判」と「魔女狩り」は少し違うが、どちらも宗教的な思想から来ている。この手の事柄をキリスト教絡みと考える者も多いが、元来キリスト教に魔女の考えはなく、魔女と言う呼び名が定着したのもそう古い話しではない。
 魔女は悪魔と契約した者の総称とされ、それは各地に古くから存在する宗教とキリスト教の概念が少しずつ融合して出来上がった考え方なのだ。
 一番古い魔女裁判の記録は1428年。スイスのヴァレー州での事件が初とされ、その事件以降、様々な場所で同様の事件が連鎖的に起こる。
 この地方ではキリスト教が入る以前、自然崇拝が主だった。自然の様々なものに精霊が宿っていると考えていたのだ。
 だが、その中に生け贄を求める精霊がいて、数年に一度、その精霊に処女を生け贄として捧げていたようだ。その生け贄は予め決まっていて、必ず精神を病むという。
 キリスト教がこの地に入ってきた時、そうした習慣は根絶されたのだが、民衆に深く根差していたその風習は、そう容易く消せはしなかったのだ。
 民衆は新参宗教の神よりも、常に傍らにあった精霊を恐れていたのだ。そこで民衆は、精神を病んだ者を"悪魔憑き"と呼んで処刑することにより、自分達の心の安寧を計ることにしたのだ…。これで大丈夫…これで安心だ…。そう思い込むことで、どうにか精神を安定させていたのだろう。世界では様々な理由があるのだが、ここではそうしたことが時代と共に変化してゆき、いつしか「魔女裁判」というものに変わっていったのだ。
 十五世紀の終わり、そうした思想の中で行われた魔女裁判は全員が無罪とされているものの、その後の天然痘の大流行によって全員が亡くなっている。これが教会が多い理由と、この大聖堂が拡張され続けた理由なのだ。
「それじゃ…精霊信仰をキリスト教によって抑え込もうとしたって訳か?」
 奏夜は訝しげにそう問うと、それには宣仁叔父が返した。
「恐らくはそうだろう。聖マタイ教会やこの大聖堂も、以前は精霊を奉る祠があった場所に建てられいる。他の
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