last case.「永遠の想い」
T 4.13.AM10:14
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この大聖堂建築以前からあるものなんだ。」
「旧礼拝堂?」
それを聞いて奏夜は首を傾げた。
この聖チェチーリア大聖堂はかなり大きい。礼拝堂を中心に全部で五つの建物があり、その間には広い中庭も作られている。
その一画に、現在では使用されてはいない旧礼拝堂が建っているが、こちらはそう大きなものではなく、建造も十四世紀頃と言われている。何回か改築されたようだが、基本は保たれて今に至っている。これといって目を引く建物ではないため、大聖堂によく来る人でも知らない人は多いのだ。
俺がそう説明すると、奏夜は一層訳が分からないと言わんばかりに顔を顰め、宣仁叔父へと問い掛けた。
「その旧礼拝堂に、一体何があるんですか?この土地にあっても、これといって何かあるわけじゃ…。」
「いや、私達の身近にありすぎて見落としていたんだ。その旧礼拝堂は、ヴェッベルグ伯が建てたものだったんだよ。」
それを聞くや、奏夜の表情は強張った。まさか、そんなものが大聖堂の敷地にあるなんて、彼も全く想像だにしなかったからだろう。
「で…ですが、それでは辻褄が合わないのでは?あの話しに出てくる伯爵は、約四百年前の人物。だったら…」
「その曾祖父が建てたんだよ。ここは本来、別の教会が建てられていた場所なんだ。そこへこの大聖堂の原型が作られ、それが少しずつ大きくなって教会を丸ごと飲み込んだ…ということなんだ。」
そこまで聞いて、奏夜は何かに気付いたような表情を見せて言った。
「ですが…この土地に教会を建てる必要は無かった筈です。この大聖堂もそうですが、ここには宗教的ないし霊的な意味合いは全くない。ですが資料を見れば、この土地に多い時で五つの教会が建っていたこともある。この小さな町には多すぎますし、その上でまだ建てるというのは…土地的にもどうかと思いますね。そう考えると、わざと建てた…と言うことになりますが…。」
「全く…その通りだ。」
奏夜の言葉に、宣仁叔父はそう答えた。それを受け、奏夜は眉を顰めて返した。
「どういうことですか?」
問われた宣仁叔父は今日何回目かの溜め息を吐き、隣の俺に「京之介、話してやれ。」と言ってきたのだった。
俺は仕方なく、あの旧礼拝堂について分かっていることを順序立てて話すことにした。
「あの旧礼拝堂を建てたのはゴッドフリートと言い、妻の亡骸を埋葬するために作られたんだ。彼の妻のヨハンナは四十七歳で世を去ったが、このヨハンナがどうも全ての元凶だと考えられる。」
十五世紀の終わり頃、この地方を流行り病が人々を襲った。恐らくは天然痘だと考えられるが、この町を治めていた伯爵は無論、この病を食い止めようと必死になっていた。
その最中、最愛の妻がその病に冒されてしまったのだ。
当時、これは不治の病だった。時には村や町ごと封鎖され、酷
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