暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
T 4.13.AM10:14
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だが、全く何の手掛かりもないのが現状だ。」
「だけど、それは何も起きないため下手に手出し出来ない…そういうことでもあるんですね?」
 奏夜にそう言われた宣仁叔父は、ただ深い溜め息を洩らしただけだった。
 確かに、奏夜の言った通りなのだ。あの日以来、この町では何も起きていない。それが何を意味しているのかも謎のまま今に至る。警察は同僚があんな死に方をしたために血眼になって捜索してはいるが、手掛かりどころか足跡さえ掴めていない。
 それらを踏まえ、俺と伯父達は、もうこれには答えを出しているのだ。

- 田邊は…もう死んでいる。 -

 あの日、犠牲者は一瞬にして人前から消えたと言われていた。ならば、田邊も同じように消えたと考える方が自然なのだ。
 ただ…彼の遺体は未だ見付かってはいない。
 心のどこかでは、まだ生きている…そう思ってはいるが、やはりそれは低い確率なのだ。
「では、これからどう動くつもりなんですか?何かあってから動くんじゃ、役に立たない警察と同じです。」
「奏夜、何て言い草だ!」
 俺は奏夜の口振りを窘めた。しかし、宣仁叔父はそんな俺を手で制し、静かに奏夜へと言った。
「奏夜、お前の気持ちは分かる。苛立っているのも重々承知している。だがな、ここで失敗すれば、より多くの人命が喪われる恐れがある。お前とて、それは理解しているのだろ?」
 奏夜は逆に問われ、視線を下げて「それは…承知していますが…」と呟くように答えると、再び顔を上げて言った。
「ですが、このままではいずれ大きな禍が起こる。そうじゃないんですか?」
「それは分かっている。こちらとて、ただ傍観していた訳ではない。」
「では、何か手を打っていると?」
「そうだ。この三ヶ月、様々な情報を収集していたが、それでとある場所が浮かび上がったのだ。」
 宣仁叔父はそう言うと、一旦口を閉ざした。どこから話すべきかを考えている様子だったが、暫くして奏夜の方から口を開いた。沈黙に耐えられなかったようだ。
「それで、その場所とはどこなんですか?そこに何があるっていうんです?」
 苛立ちを隠しきれない奏夜に、宣仁叔父はやれやれと言った風に軽く溜め息を吐いて言った。
「ここだ。」
 あまりにも短い答えに、奏夜はキョトンとしてしまった。その後、何とか理解した奏夜はそれに返した。
「ここって…この聖チェチーリア大聖堂ですか!?まさか…有り得ないじゃないですか。この大聖堂は十八世紀後半の建造ですよ?今回のことが絡んでいる事件って、確か十五から十六世紀辺りの話しじゃありませんか。」
 その奏夜の言葉に、宣仁叔父と俺は顔を見合せて溜め息を吐いた。そうして後、宣仁叔父は言った。
「いや、この大聖堂全てが十八世紀後半のものというわけじゃない。大聖堂の敷地の一画にある旧礼拝堂は、
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