テーマ短編
SAO番外編 0kcal(虚構の三膳)
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らは精力的に中層攻略を行うプレイヤー達を中心にかなり高い評価を得ていると言うことだが、恐らく彼等はサチがその作者だと知れば相応驚く事になるだろう、「こんなに大人しそうな子が」と言う意味でだ。
まあ、それも無理はない。実を言うと出品している商品は全て、サチが彼の為の装備を作ろうとする過程で出来る、失敗作達なのである。
「……ちく、ちく、ちく……」
布に向けて針をちくちくしながら真面目な顔をしているサチは、これまでの所最高傑作である“翠灰の浴衣”を思い出しながら、真剣に袴を塗っていた。が……
「うーん……」
完成した黒い袴を見て、サチは唸った。
悪くはない。悪くはないが……攻略組である彼の身体を任せるにはスペックが低すぎる。
「難しいなぁ……」
彼女にしては珍しく、やや悔しそうにそんなことを言う。ちょうど焼きあがったフルーツパンを取り出して切り分けつつ、どうにか良い物を作るコツは無いものかと思案してみても、そう容易く良い案が浮かぶ訳もなく……
「(誰か遊びに来たりしないかなぁ)」
仕方がないのでお茶とパンを食べながら、そんなあるわけもない事を考えたりしていた。
ちなみに、この二月後には、毎週のように彼女の菓子目当てにとある少女と小竜がやってくるようになることを、彼女はまだ知らない。
――――
「ちく、ちく、ちく……あれ?」
手元が暗い、そう思って周囲を見渡して、サチはすでに日が大分沈み始めていることに気が付く。どうやら少し没頭しすぎていたようだ。
何事もなければ、だんだん彼も帰ろうかと考え始める時間の筈だ、彼の性質上おそらくもうしばらく遅くはなるだろうが……
「帰ったぜ〜」
「ふぇっ!!!?」
早っ!?と言った様子で、サチは飛び上がって驚いた。玄関先にはその様子を面白がるようにニヤリと笑った彼が立っている。
「は、早いね、どうしたの……?」
「いや、ちっとしんどいことがあってな、疲れたんで早めに帰ってきた」
「しんどいこと?」
「おう、ま、いろいろとな〜」
手をヒラヒラと振って、彼はつい先ほどまで自分が座っていた揺り椅子に座りこむ。「おぉ、ぬくい」などという彼に若干顔が朱くなるのを感じたが、あえて触れずに聞いた。
「その、大丈夫?」
「あ?あぁ、ま、普通に生きてるしな。それよか腹が減って腹が減ってよ……夕飯できるか?」
「うーん、じゃあ……お風呂入ったりして、ちょっと待っててくれる?すぐお夕飯作るから」
「おう、頼むわ」
ふひぃ、などと変な息の付き方をして彼は風呂場のほうへと歩いていく。そんな様子を見てサチは苦笑して作業に取り掛かかった。
今日の夕飯は、蒸し鶏(っぽい肉)のトマトソース掛けに、クラムチャウダーである。
この森の家は、周囲を自然に囲まれた24層の中で
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