暁 〜小説投稿サイト〜
SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》
コラボ・クロス作品
戦士達×RoH
Roh×戦士達 《五話─人が信じ合う為に》
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「ぁ……あぁ……!」
「…………」
ちらちらと舞い散る雪の中で、ユミルが小さな声を上げた。地面に膝まずいたままの姿勢で呻いたその声は、涙と共に雪原に響き、消える。

「あぁ……っ!」
震えながら伸ばした手が、目の前にある、純白の毛並みに触れた。

「ルビーッ……!」
「────〜〜〜〜〜ッ!!」
ミストユニコーンと呼ばれるその純白のモンスターは、所謂「泣き声」を持たない。何故かはわからないが、その声はシステム上設定されていないのだ。だが、ユミルが伸ばした手がその身体に触れた瞬間、仔馬は確かに“声”を上げた。
それは音では無く、魂の叫びとでも言おうか。空気ではなく、人の身の内に、或いは全ての生物の根源的な部分に存在する、目には見えない何かの振動。
聞こえる筈のない其れは、間違いなく、リョウの内にも響いていた。

腕を広げたユミルがその腕をユニコーンの首に巻きつけるように抱き、ユニコーンが彼の髪に顔をうずめる。
出会って一日であると聞いていたが、それらの動作や雰囲気はまるで長い時を共に旅してきた愛馬と主人とようであり、ユミルが本当にルビーを大切な友として見ていたのであり、ユニコーンもまたそうなのだと言う事を、強く感じさせる。
だが其れは、感動的であると同時に、奇妙な光景でもあった。本来、ユミルのようなビーストテイマーと行動を共にするルビーのような“使い魔ユニット”には、自身の主から命じられた特定のコマンドを実行するか、もしくはある程度固定化された行動を行うためのロジックしか設定されていない筈であり、例えば今ユミルに抱きしめられているルビーは、命令待ち、もしくは次に行うべき行動を検索している、言ってしまえば単なる待機状態の筈である。しかし間違いなくその瞳には自らの主が浮かべている物と同じ、歓喜の光があり、その瞳にはうっすらとだが涙すら浮かんでいる。
そう言った感情のようなものを表す機能が、使い魔ユニットには有るのだろうか?いや、或いは……

「(ま、今は良いか)おう、感動の再会は済んだか?」
「ッ……」
「ん?」
リョウが二ヤリと笑ってユミルの背中に声を掛ける。途端、その小さな肩がビクリと震えたのを、リョウは確かに見た。その震え方を、彼は一度見ている。始め、自分の服を掴んだ彼の手に触れた時の、自分の手がそのまま振り払われるのではないかと恐れていた、あの時の震え方とそっくりだ。だが何故、それが今ユミルの身体をすくませているのか、リョウは一瞬だけ理解できずに考え、そして即座に……正解へと辿りついた。

────

ルビーが生きている。
生きて、ボクの腕の中で、あの日の夜と何も変わらない温もりを感じさせてくれている。その事実がボクの胸を満たして、冷たい冬の風を忘れさせてくれる。

トクン……トクン……トクン……

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