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SAO‐戦士達の物語《番外編、コラボ集》
コラボ・クロス作品
戦士達×RoH
Roh×戦士達 Prologue
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雪深いその日、一人の子供が、その場所に立っていた。


子供は、助けを求めた。
自らと、自らの友を、純粋な善意によってのみすくい上げてくれる、そんな“善人”を、子供はその雪の中、当ても無く唯一人で待っていた。

善人と言うのは、得てして探して表れると言う物ではない。ある一個人にとっての善人と言う者はすなわち、偶然とほんの少しの必然と、そして何よりも幸運が合わさる事で初めて出会える者であり、そうでなければ大概の場合、何の力も、魅力も、見返りも持たない者の助けを求める声は、虚空の彼方に溶けて消える物である。
この子供の声も、そうだった。
道端に立つ彼がどんなに道行く人に声を掛けようとしても、すがろうとしても、人々は彼を無視し、あるいは不審視し、あるいは不快感を示すようにして、雑踏の中に消えて行く。
それでも子供は……小さな望みと、人の善意を信じていた。何故なら、彼の父は言ったのだ。「人は、信じあえる生き物である」と。母は言ったのだ。「人は温かい生き物なのだ」と。そして彼は、両親のその言葉を、一片の迷いも無く信じていたのだ。
たとえ、自らの容姿が現実と言う世界で、人を遠ざけていたとしても。
たとえ、人と呼ばれる生き物の中に、唯一人の「友」と呼べる者すら、見つける事が出来てはいなかったとしても。
自らを慈しみ、抱きしめてくれた両親の温かさは、彼に「人」と言う存在を、信じさせていたのだ

……しかし。

子供はやがて、ドシャリと水気混じりの音と共に、地面に倒れ伏す。既に二日間、碌に睡眠もとらずに助けを求め続けた結果、力を使い果たし、最早立っていることすらできなかったからである。だが其れを見てすら……道を行く人々は、子供に、手を差し伸べようとはしなかった。

子は、自らに問うた
人は、信じあえる生き物である。そう、父の言葉と、母の温かさを、信じて来た。だがもし、其れが真実であるのなら……「これ」はなんだ?
この……こんな、こんなにも、醜く汚れて映る世界の、一体何を信じれば良い?
信じあえる?温かい人?何処にそんな人間がいる?
こんなものが人だと言うのなら、人と言う存在が、本質的に見ればこんなものであると言うのなら……いっそ……

「……ひっ……!」
息を飲む、音がした。
其れはきっと、自らの思考その物にたいして、少年が恐怖した声だったのだろう。
何故なら彼が今問うているのは即ち、これまで自分が信じ続けて来た価値観そのもの。其れを疑い、間違いだと認めてしまったなら、其れは即ち今まで思考と価値観を殺す事と同義だからだ。
子は、自らを疑いだした自分を押さえつけるように、自分の身体を抱きしめる。

違う、人は信じあえる筈だ。温かい筈だと、己の価値観を否定してはいけないと。子は必死に生まれ始めた疑念と、憎悪を抑えようとす
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