暁 〜小説投稿サイト〜
八神家の養父切嗣
三十八話:素顔
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
を出しながら男は顔を隠す布に手をかける。遂に素顔をあらわにするのかとその場に居る者達の視線が男に集中する。自分の理想の根底にあるものを砕くとは一体どういうことなのかとスバルは唾を飲み込む。

「君はあの空港火災の犯人は誰か知っているかい?」
「その言い方、まさか……あなたが…!」
「ああ、そして……もう一つ。君はこの顔を―――覚えていないかい?」

 顔を覆う布が完全に取り払われ男の素顔が明らかになる。


 ―――その顔を覚えている。


 目に涙をため、生きている人間を見つけ出せたと、心の底から喜んでいる、男の姿を。その顔があまりにも嬉しそうなので、まるで救われたのは自分ではなく、男の方ではないかと錯覚するほどに。死の直前にいる自分が羨ましく思えるほど、男は何かに感謝するように、ありがとう、と何度も何度も繰り返した。忘れるはずなどない、その顔は自分の理想そのもので、憧れで、自分を救ってくれた―――正義の味方だった。


「これで分かっただろう。君の理想は最初から―――壊れていたんだ」


 衛宮切嗣はかつて自らが救った少女の前に、此度は敵として再びその顔を見せたのだった。

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ