3部分:第三章
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第三章
「それなら」
「いいわね、それで」
「うん。山本ちゃんわかってるじゃない」
「外ではマネージャーと呼びなさい」
軽い言葉には釘を忘れない。
「とにかくそれでいいのね」
「うん、これなら」
「わかったわ。じゃあ雑誌の編集さんの方とはそれで話をしておくから」
「お願い」
「思ったより早く終わったわね」
話はそれで終わりであった。山本は前に置いてあったコーヒーを飲みながら述べた。
「次は歌のレッスンだけれど」
「カラオケね」
「馬鹿言ってるんじゃないわよ」
ここで頭をぽん、とはたかれた。
「今日はオフじゃないのよ」
「ちぇっ」
恵理香はそう言われて口を尖らせた。
「いいじゃない、それでも」
「駄目に決まってるでしょ、何考えてるのよ」
「だって歌うのは同じなんだしさ」
「違うに決まってるでしょ。どうしてそうなるのよ」
「レッスンで本当に上手くなるのかなあ」
「実際になってるじゃない」
山本は言う。
「結構」
「あたし最初から歌は上手いわよ」
恵理香は懲りない感じで反論する。
「中学校の時からカラオケ三昧だったし」
「まあそれはそうね」
それは山本も認めた。
「喉も強いし」
「四時間ぶっ通しで歌っても平気よ」
「だからといってレッスンはなくならないわよ」
「何だ」
「いつも言ってるでしょ。奇麗な原石も磨かなければ原石のままだって」
「別に原石でもいいし」
「そんな馬鹿なこと言ってると後が大変よ」
「あたし天才タイプだし」
「天才は九九パーセントの努力と一パーセントの閃きよ」
言うまでもなくエジソンの言葉である。
「つまり努力するのが天才なの。あんたは単なる怠け者」
「なまけものだって生きてるじゃない」
「それは動物のナマケモノでしょ、あんたは人間」
「厳しいなあ、本当に」
「愛の鞭よ」
朝と同じ様なやりとりだった。そんなやりとりでグラビアの打ち合わせをした後で歌のレッスンだった。そしてそれが終わってから今度は番組の収録であった。
「うふふ」
恵理香は車の中でにこにこと笑っていた。白い乗用車で山本が運転している。
恵理香はグレーブラウンの上着にデニムのミニであった。若い女の子らしい格好を選んだ。それに対して山本はグレーのスーツ、タイトはミニで黒ストッキングを履いている。どちらもよく見ればかなり艶かしい姿である。
「何かおかしいの?」
「だってこの番組ね」
「ゴールデン枠だから?」
あるバラエティ番組のゲストである。恵理香はこちらでもあけっぴろげで天然なトークで人気が出て来ているのである。何かと器用なのだ。
「それもあるけれど」
「他には?」
「今日さ、あの番組の主役やってた人が出るのよね」
「誰?」
「ほら、あのずっ
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