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戦国異伝
第二百五十話 信長の先陣その七

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「そして牛若丸と言われていた頃からじゃ」
「魔界衆と戦われ」
「天下の為に働かれていましたな」
「しかし源氏の因縁に巻き込まれてな」
 身内同士で殺し合う因縁だ、源氏は為義の子の代即ち義経達の父義朝の代から身内で殺し合い果てには血が完全に絶えたのだ。
 それを思い出してだ、信長は言うのだった。
「命を落とされた」
「残念なことに」
「そうなりましたな」
「あの因縁は意味がなかった」
「はい、身内で争うなぞ」
「何の利益もありませぬ」
「実際に源氏はそれで絶えました」
「それも完全に」
 幸村と兼続も言う。
「それを考えますと」
「源氏は、ですな」
「魔界衆よりも因縁にやられた」
「そうなりますな」
「そうであった、魔界衆は敵じゃが」
 それと共にというのだ。
「そうした因縁もじゃ」
「敵ですな」
「まさに」
「そうじゃ」
 信長は強い声で答えた。
「敵なのじゃ」
「そういえばこれまで」
 兼続が言った。
「鎌倉幕府は極端ですが」
「室町幕府もじゃな」
「尊氏公は直義公を殺しています」
「望まずともな」
「ですな、そして四代の義持公も」
「弟君を殺している」
「はい、義嗣公を」
 このことは歴史にある、鎌倉幕府もそうしたことを行ってきたのだ。
「そして六代の義教公は」
「最早あれではな」
「天下を治めるどころか」
「ああなられるのも道理じゃ」 
 重臣であった赤松氏に弑逆されることもというのだ。嘉吉の変だ。
「あの方は人を無闇に殺め些細なことで酷く叱り過ぎた」
「まさに暴君であられましたな」 
 幸村も言う。
「あれではです」
「天下は定まりませぬ」
 二人でだ、信長に言った。
「到底」
「無闇に、身内同士では特にな」
「争ってはならぬのですな」
「それは衰えの道であり」
「因縁でありますな」
「その因縁も敵なのじゃ」
 まさにというのだ。
「わしはその因縁も切りたいのじゃ」
「では勘十郎様のことは」
 蘭丸が言って来た。
「あのことは」
「その時はこうは考えていなかったがな」
「それでもですな」
「それが結果としてな」
「因縁を切ることになりましたか」
「猿夜叉も死なせずに済んだ」
 妹婿である長政もというのだ。
「可能な限り流れる血は少なくて済んでおるか」
「その血が流れたことが少なかった」
「それがやはりな」
「因縁を切ることになった」
「そうやもな」
 こう言うのだった。
「わしにとってな」
「ではやはり」
「勘十郎を切らずに済んだことはな」 
 魔界衆の妖術を破ったうえで、信長はこの時は魔界衆のことは微かに気付いてすらいなかったにしてもだ。
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