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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十四話 クロプシュトック侯事件(その2)
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の中、ここまで冷徹に策を巡らせられるものなのか。この人は穏やかに微笑みながら、フレーゲル男爵が罠に落ちるのを待っていたのだ。そして誰にも知られる事無く爪を研いでいた。一体どういう人なのだろう。
「メックリンガー准将、陛下に安全な場所へ退避するようにお伝えください。それからこの場の方々もです」
「承知しました」
メックリンガー准将は中将の指示で動き出した。出席者からも安堵の言葉が漏れる。唯一固まっているのはフレーゲル男爵とその関係者だけだ。
「お待ちください、中将。男爵に軽率な言が有ったのは確かです。しかし、忠誠心が無いというのはいささか酷すぎましょう。それにこの場での処断は余りに乱暴というものです」
「お、伯父上」
「ヴァレンシュタイン、アンスバッハの言うとおりだ、フレーゲルを許してやってくれぬか」
アンスバッハ准将、ブラウンシュバイク公がフレーゲル男爵の命乞いに動いた。男爵はほっとした顔をしている。公爵が動けば大丈夫だと思ったのだろう。中将にしてもここは貸しを作って終わりにするだろう。
「残念ですが、許す事は出来ません」
「!」
ブラウンシュバイク公の頼みを断った! 皆驚愕している、あり得ない事がおきた。
「男爵閣下はブラウンシュバイク公にも逃げようと誘ったのです。帝国の藩屏たる公爵閣下にも不敬罪を犯させようとしたのですよ。許す事は出来ません。もし、公爵閣下が不敬罪を犯したらフロイライン・ブラウンシュバイクはどうなります。陛下の御血筋でありながら不敬罪を犯した父親を持つ、そういう御立場におかれることになるのです。それでも許せとおっしゃいますか?」
本気だ、本気で殺す気だ。中将はブラウンシュバイク公の口を封じた。もう公爵にもフレーゲル男爵を助ける事は出来ない。ヴァレンシュタイン中将は獲物の首に研ぎ上げた爪を突き刺そうとしている。柔らかく微笑みながら……。
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