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魔法科高校の有能な劣等生
愚者
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ィックな動きをしながら俺は考える。
思考回路を記憶を探り、あの時、あの瞬間を。
「―――ZERO」
その結論を口に出した瞬間、俺の足元は跳ね上がった。
天野の斬撃だ。あの蹴りで足元を吹き飛ばしたのだ。
「厄介な蹴りだッ」
空中に散らばった足場を利用し、移動する。
空中では格好の的だ。少しでも動き、標的をずらさなければあの斬撃をもろに喰らってしまう。
「無月、貴様を成敗せねばならない」
「何故です、」
「解るまいな。お前の様な恵まれた人間には」
「恵まれた……人間? 俺は恵まれてなんていませんよ」
「それはお前自身が気付いてないだけだ」
その間にも二人の攻防は続いている。
会話をしながらの戦闘は影のスイッチを切り替えさせようとしていた。
模擬戦【遊戯】から戦闘【殺す】に。
徐々に―――スイッチは入る。例えるなら車のアクセルペダルを少しずつ踏み、スピードを上げる様な。
無月 影を車で例えるならMT『マニュアルトランスミッション』車だ。
ギアを自分の意思で変え、対象の脅威判定を更新する。
激動『アクセル』に似たスイッチを切り替え。
影は加速する、単純にスピードを上げるのではなくスピードの質を上げる。
その変化に天野は対応できず、その攻防は防攻になっていた。
当たらない、当たる要因すらない。
それは人間の限界を超えていた。如何に天野の蹴りが、魔法で強化されていようと当たらなければ意味はない。
「驚異的な速さだな」
天野は冷静に対応する。当たらないと解っても冷静に影の行動を予測し、的確に当てる為の努力を怠らない。
「もぉ、諦めて下さい」
―――殺す。
「諦められんよ」
――――――殺しちゃえ。
「諦めて、下さい」
「諦めんさ!」
楽しげに。無邪気な少年の様な笑顔で天野は蹴りを繰り出す。斬撃は刻まれ、後を残すだけ。それなのに天野の表情は【笑顔】なのだ。
「……諦めろ」
―――――殺せ。
影は刃を構える。
刃、それは手刀。日本刀の様に構え、蹴り【斬撃】そのものを斬り捨てた。
抑えられない衝動に眩暈する。
殺したくないのに俺は殺したいと思っている。
傷付けたくないのに壊したい。矛盾は脳内を駆け巡る。
でも、結論は出ている。壊したくないなら壊さずに殺せばいい。
「―――殺すよ、」
影の手刀【刃】は天野の首筋に向けられる。
「ねぇ―――殺していい?」
戻ってしまう、あの頃に。
影自身、この一線を越えれば戻れないと解っている。
なのに……なんで俺はこんなに壊したいんだ。
また、矛盾を生じさせる。もぉ、どうでもいい。
殺したいから、殺す。壊したいから、壊す。
「やはり、」
天野は笑顔のままだった。
そして。

「お前は人間だな」





それは数日前の事である。

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