愚者
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「魔法を使わず、己の力だけで勝利する。
己と言っても自身の『力』だけで勝ち進むのは容易な事ではないぞ」
「解ってますよ、俺の進む道は容易じゃない。
それはこの道を選択した時から承知しています。でも、こんな緩やかな道で魔法を使う事はありえない」
魔法師らしからぬ言葉に天野は。
「貴様は人間だな」
―――人間……?
俺が……人間?
「誰よりも人間らしい。
純粋な……いや、純白な人間かな」
「訳の解らない事を。俺は元から【人間】ですよ」
「いや、貴様は自分自身を否定している」
「……否定?」
「お前は自分をこう思っているのだろう。
人間の皮を被った化物とな」
―――なんで、この人は。
否定したい。でも、否定できない男の言葉に苛立ちを感じ。
俺は軽く、舌打ちを打っていた。
「その素振りだと当たりかな」
「否定はしない。肯定も……」
「否定できないの間違いだろう?」
やっぱり俺は人間なのかな。
イライラしてる、何時の間にか天野先輩の腹に一撃、入れようとしていた。
「お前、結構、冷静な奴だと思ってたが。
案外、おてんばだな」
また、防がれた。
続けざまに蹴り、フックと繋げる。
だが、全て防がれた。避けている……違う。打撃の威力を逸らされてるんだ。
「どうした? お前の実力はその程度なのか?」
挑発されている。冷静に、冷静に成るんだ。
落ち着け……乱されるな。冷静に対処すれば一撃、喰らわせられる。
「そろそろ俺も攻撃に転じるとしよう」
天野は脚を天に向け、一気に振り落とした。
―――防げない!
俺は体を捻り、天野の蹴りを回避する。
「それで回避したつもりか?」
爆発した。
爆発、それは爆弾による爆発ではない。
天野の蹴りから生み出された衝撃波だ。直に喰らってたら死んでた……魔法で威力を強化された一撃?
それとも衝撃を発生させる魔法?
解らない、一旦、距離を取らないと。俺は天野の蹴りにより発生した砂煙を利用し逃げる。
建物の障害物を利用すれば逃げ切れる。ここら一体の道は理解している。有利な位置取りで勝負を決めるんだ。
「逃がさん」
また、地面に蹴りを放った。
それは斬撃の様に大地を滑り、俺を目指して走って来る。
俺は建物の陰を利用し回避する。その斬撃の様な蹴りは巨大な薙刀で壁を切り刻み、綺麗な穴を開けた。
「空気を圧縮させた蹴り……」
振動と圧縮を合わせた魔法。
接近しても後退しても、あの蹴りからは逃れられない。
下手すれば……いや、下手しなくても死ぬぞ。明らかに違反だろ、威力も速度も。
「無月、俺は貴様を倒さねばならない」
蹴り【斬撃】を繰り出しながら天野は距離を詰めて来る。
「貴様は俺達の領域に踏み入った。それは許される事ではない」
「領域……?」
アクロバテ
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