漣
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草木も眠る丑三つ時、セーラー服を着た少女−綾波型駆逐艦『漣』−が麻袋を引きずり、洞窟へやって来た。
「やっぱ、重いなぁ」
そう漣は呟くと、ポケットから取り出したベルを鳴らす。
すると、洞窟の奥から下卑た笑みを浮かべた男が現れる。
「やあ、時間通りだね」
「こう見えて、私は約束の時間までには来る主義なんで」
そう言うと、漣は麻袋から手を離す。
「ご注文の“曙”は持ってきたわよ」
「じゃあ、確認させてもらうね」
「どーぞ」
男はニヤニヤと笑いながら、麻袋を捲り、中を確認する。
そこにはここに来る際、身体中をぶつけたのか痛みに呻く綾波型駆逐艦『曙』の姿があった。
「顔には傷はついてないはずだから、後は好きにして」
漣がそう言った瞬間、曙の表情が変わる。
「ちょっと、漣!どういうことよ!」
「どうもこうも、曙。あんたはこの人達の玩具になるの」
強気な態度の割に打たれ弱い性格の曙はすでにこの段階で泣きそうになっていた。
対する漣の表情は冷たく、麻袋から顔を出している曙の事を完全に見下していた。
「お、玩具って……。っ!嫌!嫌よ!絶対に嫌ぁ!」
玩具の意味を理解した曙は漣でも見たことがないくらい狼狽し、暴れた。
その表情を見た男は更に笑みを深め、涙を流し始めた曙の頬を舐めた。
「嫌って、もう取り消せないよ。このおじさんからお金貰っちゃってるんだもん」
「あ、ぁあぁあぁあぁあぁ」
漣のその一言で曙は力なく声を上げる。
「それに、曙さ」
漣は呆然としている曙の耳元に口を寄せ、言葉を紡いだ。
「いつもご主人様の事、『クソ提督』って言ってたよね。漣さ、ずーーーっと我慢してたんだぁ」
「そ、それは!」
「うん、わかってるよ。曙、ご主人様に一目惚れして、照れくさかったんだよね?漣も一目惚れだし」
「でしょう!だから、お願い!今すぐ「だからって、ご主人様に対する暴言は見逃せないなぁ」……嫌、嫌!」
男の背筋を冷たいものが流れ落ちる。
そう、漣は笑っていた。
嗤っていたのだ。
男は何人もの壊れた人間、壊された人間を見てきた。
そして、男が最も怖いと思うのは、正常なようで壊れている人間なのだ。
他人に壊れていることを見せない。
それがどれだけ怖いか、男は身を持って知っていた。
「では、そろそろ、持って行かせてもらうね」
「あ、はい!」
男がソロソロと声をかけると、漣は満面の笑みを浮かべて、曙から離れた。
「じゃあ、皆待ってるから行こうか」
男が曙を肩に担ぎ、洞窟の奥へと歩いて行く。
「いや、いやぁぁぁあ!お願い!いい子
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