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恋姫†袁紹♂伝
第40話
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はは、彼は用済みなので」

「そ、そんな――」

「……そういうことね」

 大体を理解した賈駆は董卓を庇うように前に出る。武の欠片も無い自分の背ほど無力なものはないが、矢避け程度にはなる。

「ははは聡明聡明、実に察しが良い」

「詠ちゃん、どういうことなの?」

「簡単な話よ、アイツは……大金に目が眩んだ。ボク達を連合に引き渡して、金を得ようっていう算段」

「ふむ、当たらずも遠からず――と言った所ですな」

「あら、商人のあんたに金以外の目的があるわけ?」

 口調自体はいつも通りだが、余裕の無い賈駆は冷や汗を流し続ける。
 状況は絶望的。それでも何とか打開策を生み出そうと、時間稼ぎと情報を共に得ようとしている。

「見え透いた時間稼ぎ。乗ってあげましよう」

 商人の男は今も笑みを浮かべている。しかしそれは人を欺くとき使う仮面では無く、弱者が見せる必死の抵抗を嘲笑う類の。歪んだ嗤いだ。

「儂はある方の密命で動いているのです」

「……密命」

「董卓様を相国に据えた――あの方ですよ」

『!?』

 二人の娘は驚きに目を見開き絶句する。この商人の言葉が真実なら、黒幕は張譲だ。
 彼を知る二人は驚きを隠せない。董卓を相国に据えた後の騒動では頭を下げ謝罪し。連合が動き出すと同時に、洛陽から十常侍達が脱出するなか一人残り、董卓軍を裏から支えてくれた人物だ。

「その様子では欠片も疑っていなかったようですな。ははは、さすが張譲様だ」

『……』

 頭が白くなるような衝撃の中、軍師の性なのか、賈駆はある答えに辿りついた。

「この……戦……」

「む、この戦がどうかしましたか?」

「全て……計画されていた」

「!? はは、はははは!!」

 賈駆の呟くような言葉を聞いて、商人は狂ったように笑い出した。
 余りに笑いすぎて体勢を崩し、杖でそれを支えている。

 それが治まると彼は語りだした、その計画を。

 以前、十常侍の一人である張譲は現状に不満を抱いていた。
 搾取し続けた大陸の疲弊、賊の増加、漢王朝の失墜とそれに伴う権力の弱化。十常侍が一丸となり漢の復権に動けば変わったかもしれない、しかし彼等は張譲を含め自己中心的。自分の権力の為に誰かを利用する事はあっても、誰かに利のある事の為に動くわけが無い。
 張譲一人の権力では王朝の復権は不可能、協力者を得ようにも諸侯は無能揃い。
 そこで――十常侍の権力を全て吸収することにした。

 鍵となるのは董卓(火種)だ。彼女を相国に据えれば、必ず各地から不満が上がる。
 張譲はそれを影で助長させ、反董卓の風を引き起こした。そして連合が結成する。
 戦力差は雲泥の差。十常侍達は泥舟と化した洛
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