第40話
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
はは、彼は用済みなので」
「そ、そんな――」
「……そういうことね」
大体を理解した賈駆は董卓を庇うように前に出る。武の欠片も無い自分の背ほど無力なものはないが、矢避け程度にはなる。
「ははは聡明聡明、実に察しが良い」
「詠ちゃん、どういうことなの?」
「簡単な話よ、アイツは……大金に目が眩んだ。ボク達を連合に引き渡して、金を得ようっていう算段」
「ふむ、当たらずも遠からず――と言った所ですな」
「あら、商人のあんたに金以外の目的があるわけ?」
口調自体はいつも通りだが、余裕の無い賈駆は冷や汗を流し続ける。
状況は絶望的。それでも何とか打開策を生み出そうと、時間稼ぎと情報を共に得ようとしている。
「見え透いた時間稼ぎ。乗ってあげましよう」
商人の男は今も笑みを浮かべている。しかしそれは人を欺くとき使う仮面では無く、弱者が見せる必死の抵抗を嘲笑う類の。歪んだ嗤いだ。
「儂はある方の密命で動いているのです」
「……密命」
「董卓様を相国に据えた――あの方ですよ」
『!?』
二人の娘は驚きに目を見開き絶句する。この商人の言葉が真実なら、黒幕は張譲だ。
彼を知る二人は驚きを隠せない。董卓を相国に据えた後の騒動では頭を下げ謝罪し。連合が動き出すと同時に、洛陽から十常侍達が脱出するなか一人残り、董卓軍を裏から支えてくれた人物だ。
「その様子では欠片も疑っていなかったようですな。ははは、さすが張譲様だ」
『……』
頭が白くなるような衝撃の中、軍師の性なのか、賈駆はある答えに辿りついた。
「この……戦……」
「む、この戦がどうかしましたか?」
「全て……計画されていた」
「!? はは、はははは!!」
賈駆の呟くような言葉を聞いて、商人は狂ったように笑い出した。
余りに笑いすぎて体勢を崩し、杖でそれを支えている。
それが治まると彼は語りだした、その計画を。
以前、十常侍の一人である張譲は現状に不満を抱いていた。
搾取し続けた大陸の疲弊、賊の増加、漢王朝の失墜とそれに伴う権力の弱化。十常侍が一丸となり漢の復権に動けば変わったかもしれない、しかし彼等は張譲を含め自己中心的。自分の権力の為に誰かを利用する事はあっても、誰かに利のある事の為に動くわけが無い。
張譲一人の権力では王朝の復権は不可能、協力者を得ようにも諸侯は無能揃い。
そこで――十常侍の権力を全て吸収することにした。
鍵となるのは董卓だ。彼女を相国に据えれば、必ず各地から不満が上がる。
張譲はそれを影で助長させ、反董卓の風を引き起こした。そして連合が結成する。
戦力差は雲泥の差。十常侍達は泥舟と化した洛
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ