暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第139話 失明
[7/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 そして……。

「アイツを封じた宝石を預かってくれるかな?」

 今の俺の状態では、これから先の戦闘中に失くして仕舞う可能性もあるから。
 取って付けたような理由。そもそも、前衛に出ないのなら戦闘中に失くす事などあまり考えられない。要は、これを預けるから無理をするな、と言う意味。
 それに、これに封印された犬神使い……の魄の部分は、おそらく、平安時代に別れたさつきの弟。つまり彼女は、今回の生命でも彼の事を守れなかった、と言う事。更に言うと、この戦いが終わった後に水晶宮へとその宝石を預けて仕舞えば、もう二度と彼女が彼……本当の平良門の転生者をその手に抱く事は出来なくなる。
 邪神の贄にされた人間の魂が輪廻に戻る可能性は非常に低い。更に、魄を失った魂も転生に重大な影響が出る。その為に前世の俺はカトレアさんと白娘子の融合を図ったのです。死んで仕舞えばすべて終わり。ここは、どんな形で生命を終えたとしても次の転生に問題なく進める……などと言う呑気なシステムに支配されている、と言う世界ではない。

 つまり、彼女はこれから先、何度転生を繰り返しても、彼に出会う可能性は――

「しょ、しょうがないわね!」

 仕方がないからアタシが預かって上げるわよ。感謝しなさい。
 ……ハルヒと同じような上から目線の台詞を返して来るさつき。但し、ハルヒと違い、さつきの場合には何故だかその台詞の際に妙なギリギリ感が漂う。
 どう考えても虚勢を張って居るのが丸分かり。見た目の幼さとも相まって、態度や言葉の内容はハルヒのソレとかなり似ているのに、さつきに関してはそれほどの反発も感じない。

 もっとも、件のハルヒにしたトコロで、俺が反発を覚えているか、と問われると、そんな事はない、……と答えるのですが。

 ただ、何にしても……。
 もう文句はないだろう。そう考えて、かなりバランスの悪い足取りで、先ほど見つけた樹木の方向に進もうとする俺。
 その瞬間、自らの身体にかなり近い位置で微かに鳴る退魔の鈴の音。
 そして――

「おやおや。その姿を涼宮さんが見ると、何と言いますかね」

 しっかりと右側から身体を支えられる俺。僅かに甘い香りと、かなり柔らかな――有希やタバサとは違う女性らしい華奢な感じ。そして、和装に相応しい生地の触り心地。
 強く香る香水や化粧品の類を(みそぎ)の後に使用するとも思えないので、この甘い香りの正体はおそらく(こう)。白衣や彼女の黒髪に焚き込められた退魔の香の香りだと思う。

「うるへい。誰の所為でこんな事になったと思っている」

 いくら方向と距離が分かっているとは言え、先ほどまで行われた戦闘の所為で足場は異常に悪い。所々に仙術の作り出した大穴が口を空け、それでなくとも、砂利を敷き詰めた歩道
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ