第6章 流されて異界
第139話 失明
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。
そして……。
「アイツを封じた宝石を預かってくれるかな?」
今の俺の状態では、これから先の戦闘中に失くして仕舞う可能性もあるから。
取って付けたような理由。そもそも、前衛に出ないのなら戦闘中に失くす事などあまり考えられない。要は、これを預けるから無理をするな、と言う意味。
それに、これに封印された犬神使い……の魄の部分は、おそらく、平安時代に別れたさつきの弟。つまり彼女は、今回の生命でも彼の事を守れなかった、と言う事。更に言うと、この戦いが終わった後に水晶宮へとその宝石を預けて仕舞えば、もう二度と彼女が彼……本当の平良門の転生者をその手に抱く事は出来なくなる。
邪神の贄にされた人間の魂が輪廻に戻る可能性は非常に低い。更に、魄を失った魂も転生に重大な影響が出る。その為に前世の俺はカトレアさんと白娘子の融合を図ったのです。死んで仕舞えばすべて終わり。ここは、どんな形で生命を終えたとしても次の転生に問題なく進める……などと言う呑気なシステムに支配されている、と言う世界ではない。
つまり、彼女はこれから先、何度転生を繰り返しても、彼に出会う可能性は――
「しょ、しょうがないわね!」
仕方がないからアタシが預かって上げるわよ。感謝しなさい。
……ハルヒと同じような上から目線の台詞を返して来るさつき。但し、ハルヒと違い、さつきの場合には何故だかその台詞の際に妙なギリギリ感が漂う。
どう考えても虚勢を張って居るのが丸分かり。見た目の幼さとも相まって、態度や言葉の内容はハルヒのソレとかなり似ているのに、さつきに関してはそれほどの反発も感じない。
もっとも、件のハルヒにしたトコロで、俺が反発を覚えているか、と問われると、そんな事はない、……と答えるのですが。
ただ、何にしても……。
もう文句はないだろう。そう考えて、かなりバランスの悪い足取りで、先ほど見つけた樹木の方向に進もうとする俺。
その瞬間、自らの身体にかなり近い位置で微かに鳴る退魔の鈴の音。
そして――
「おやおや。その姿を涼宮さんが見ると、何と言いますかね」
しっかりと右側から身体を支えられる俺。僅かに甘い香りと、かなり柔らかな――有希やタバサとは違う女性らしい華奢な感じ。そして、和装に相応しい生地の触り心地。
強く香る香水や化粧品の類を禊の後に使用するとも思えないので、この甘い香りの正体はおそらく香。白衣や彼女の黒髪に焚き込められた退魔の香の香りだと思う。
「うるへい。誰の所為でこんな事になったと思っている」
いくら方向と距離が分かっているとは言え、先ほどまで行われた戦闘の所為で足場は異常に悪い。所々に仙術の作り出した大穴が口を空け、それでなくとも、砂利を敷き詰めた歩道
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