第6章 流されて異界
第139話 失明
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但し、心のままを台詞にする訳には行かない。普段と同じように、素直な振りをして感謝と謝罪をして置く。
真っ直ぐに上げた顔。未だ回復しない瞳は閉じたまま。しかし、表情は柔和な表情で。
その瞬間、何故かかなりハッとしたような気を発するさつき。しかし、直ぐに怒ったような雰囲気へと変わる。
……と言うか、コイツ、術者としては心の動きが分かり易すぎ。何も弓月さんみたいになれ、とは言わないけど、それでも少しは隠す方法を学ぶ必要があると思うけどね。
心の中でそう考え――
「我、木行により樹木を探す。疾く律令の如くせよ!」
生来の能力で無理矢理に立ち上がりながら、口訣を唱える俺。
尚、普通は樹木の種類を決めてから行使する術なのですが、今回は樹木なら種類は問わず。ただ、ある程度の大きさと、その木が立っている場所が分かれば良いだけのかなり情報のレベルを下げた術の行使と成って居ます。
確かに木の発して居る極薄い気配も感じる事が普段は出来るのですが、今宵、この場所は闇の気配が濃すぎて少し不安。そうかと言って、この瞳の不調は簡単に回復させられるような物では無さそうなので……。
しかし――
「ちょっと、何を勝手に始めようとしているのよ!」
あんた、落ち着きがないって、小学校の頃の通信簿に書かれなかった?
さっさと腕の再生を行おうとする俺に待ったを掛けて来るさつき。後に続く言葉は蛇足に過ぎないとは思いますが。しかし、このクソ忙しい時に、何を……。
……訳の分からない事を、と一瞬、ムッとし掛けた俺。しかし、直ぐに冷静になり、次に彼女の言い出しそうな言葉を予測する。
それは、
『視力が回復するまで前に出て来るな』
「目が完全に見えるようになるまで、アンタは後ろでじっとしている事。いいわね!」
そもそも、九天応元雷声普化天尊法を誤射なんかされたら、こっちが迷惑なのよ!
目の前に居るはずなのに、何故か声はあらぬ方向に向かって居る事が分かるさつき。
……確かにそう無茶な要求と言う訳でもない。まして、高空で神刀を振り回す味方と、雷系の術の相性は最悪。誤射と言うか、術の発生する場所と敵との間に入られたら、その時は間違いなくさつきにも命中させて仕舞う。
ただ、これも俺の身体の事を考えた上での言葉である事は間違いない。但し、その言葉の中には、おそらく彼女自身の安全が担保されていない。
「あぁ、了解や。今回は少し頑張り過ぎた」
そう答えながら、生来の能力を発動。そっぽを向いたままのさつきの目前に、犬神使いを封じたターコイズを浮かび上がらせる。
一瞬、驚いたような気を発するさつき。その彼女に対して、瞳を閉じたままで笑い掛ける俺
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