第6章 流されて異界
第139話 失明
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聞いた瞬間、間髪入れず「あんた、自分が何を言っているのか分かって居るの!」とか、「あんた、やっぱり馬鹿なのね。そうなんでしょう?」などと騒ぎ出したヤツは素直に無視。
何故ならば、
「すまんけど、この両腕、斬り落としてくれへんか?」
さつきに頼んだけど、聞いて貰えないから。
そもそも、その騒いでいるヤツが最初に頼んだ時に素直に斬り落としてくれたら、こんな危険な事をせずとも済んだのです。故に、今回に限り、さつきが何を言おうがすべて無視。
「矢張り貴方は面白い人だ」
その程度の事なら御自分で出来るでしょうに。
笑ったような声でそう答える炎の巨人。一瞬、ゲルマニアの皇太子やオーストラリアからの留学生と自称していた時のヤツの姿形を思い浮かべ、少し不愉快な気分に陥り掛ける俺。何にしても、イケメンと言うのは世の中を渡って行きやすいように出来ているのが気に食わない。
ただ、今の笑ったように感じた波動に付いては、何故か真実の気配をその内側に籠めていたので……。
もっとも、其処は今、重要な個所ではない。まるで荒れる海で漂う筏状態、波のままにあちらに流され、潮の都合でこちらに戻される思考を、無理矢理に元の航路へと戻す俺。
そう。ヤツが言うように、確かにそれが出来れば苦労はない。ただ、目が見えないからちゃんと使えない部分だけを斬り落とす事が出来るかは微妙。何故ならば、組織として使い物にならなくなった部分から先の部分に、急場しのぎの木製の腕を再生させたとして、その腕がちゃんと機能するかどうかが分からないから。
間に死んで仕舞った神経や細胞を挟んで、其処から先に微妙な動きを要求される印を結ぶような行為や、剣を振るうような戦闘行為が出来るか、と問われると流石に……。
まして、今の俺に出来るのは生来の能力を使ってねじ切るか、引き千切ると言う、非常に大雑把な方法しか持たないので……。
その他の斬り裂く系の仙術は流石に剣呑すぎて、腕を斬り落とすついでに別の個所まで斬り落とし兼ねない。
「大丈夫。貴方ならその腕でも十分に戦えますよ」
その事は僕が保障します。
かなり軽い口調でそう言葉を続ける炎の巨人。但し、当然のように信用度ゼロの相手から保障されたとしても嬉しい訳はない。
確かに、最初から期待はしていなかったから、このような不誠実極まりない答えであったとしても、落胆する事はありませんが……。
仕方がない。かなり大雑把になるが肩に近い部分から腕をねじ切って、其処から先に腕を生やすしかないか。頭で釘が打てる事を自慢している奴と、他人を揶揄する事しか出来ない奴に心の中でのみ悪態と罵詈雑言を浴びせ、それでも決断は早い方が良い。
それでなくても、時間が掛かり過ぎている。
犬の遠吠えは止まず。異界の
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