第6章 流されて異界
第139話 失明
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
第一の理由は俺が持って居る職能の問題。これは俺自身が制御出来ない部分なので何とも言い難いのですが、這い寄る混沌と他のクトゥルフ系の邪神の違いは、這い寄る混沌は奴らの中で唯一封印を免れた存在だ、……と言う点。その唯一の利点を失う危険を冒してまで、この場で俺を殺さなければならない理由はないでしょう。
そして第二の理由。こちらの方が理由としては大きいと思いますが、俺と言う存在は自らが能力を与えた奴ら。……今回の例で言うのなら、あの犬神使いの青年に取ってはちょうど良い試練だから。
絶対に越えられない壁。倒す事の出来ない敵と言う訳ではない。まして、あの犬神使いに取っての勝利条件は幾らでもあったはずです。例えば、当初の目的通りにアラハバキを召喚する事。ハルヒを、さつきを殺す。その他の不特定多数の人間を殺す。エトセトラエトセトラ。
結局、最初から最後までアラハバキ召喚に拘ったから、最終的に俺に封印されて終わったけど、昨夜、俺が現われた段階で、この地での企てをすっぱりと諦めて何処か別の場所に逃亡する。そんな後ろ向きの選択も、あの犬神使いの青年に取っては勝利と言う結果に成る可能性すらあった……はず。
何故ならば、あの召喚の術式では、高坂の地で目的の高位の神を召喚する事は難しかったと思いますが、他の場所でなら何モノかを召喚出来る可能性が非常に高いと思いますから。
その試練を如何にして切り抜けるのか。その足掻き、苦しむ様を神の視点から眺める。それがヤツの目的。
その為の相手役として必要な人材を、自らの手で殺して仕舞う可能性は低いでしょう。
それに、そもそもヤツに与えられている職能は混沌と矛盾。理に適った行動を必ず取るとは限らない。時には自分たちに取って不利となる行動を取る可能性もある。
もし、俺を殺す……排除するのなら、それはヤツの主。所謂、外なる神と言われる連中。無限の中核に棲む原初の混沌などが俺の事を邪魔だ、と考えた時にのみ、コイツ……這い寄る混沌は俺を全力で排除しに掛かると思いますね。
おそらく本体は三大欲求しか持たない、しかし、それでも自らを創り出した神であるアザトースに使われる事に大きな不満を感じながら。
もっとも、門にして鍵ですら、その本体がどんなモノなのか分からないのに、そこに無限の中核に棲む原初の混沌の事など、流石に俺では理解の遙か向こう側の存在となるので……。
「それで、ひとつ相談なんやけどな」
魔との交渉。……非常に危険な行為を行う割にはかなり無防備な問い掛け。
俺の正面には二人の人間の気配。おそらくこれは、さつきと弓月さん。二人で完全に其処から大体五メートル先に存在する黒い気配から、俺を隠すように立っている。
……と言うか、俺の言葉を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ