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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第五十三話 クロプシュトック侯事件(その1)
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つ、こちらに近づいてくる。
「他の方々にも贈られたのでしょうか、例えばリッテンハイム侯とかですが」
「……そうかもしれんな」
今度は眉をしかめた。自分以外の人間に近づいたと指摘されるのは面白くないのかもしれない。
「閣下、陛下や御側近の方々にとりなしを頼まれませんでしたか?」
「うむ、頼まれた。わしだけではないぞ、おそらくリッテンハイム侯も頼まれたはずだ」
「最近、クロプシュトック侯に変わった事は無かったでしょうか?」
「伯父上がそのような事知るわけが有るまい、いい加減にしろ!」
「やめよ、フレーゲル」
ブラウンシュバイク公は妙だと思ったようだ、誰でもそう思うだろう。思わないのはフレーゲルぐらいのものだ。エーリッヒは何かを知りたがっている。彼の視線はずっとブラウンシュバイク公に当てられたままだ。多分その答えをブラウンシュバイク公が持っているのかもしれない。
「そうだな、変わった事といえば息子が戦死したと聞いている。この間の戦いでだ」
「跡取りはいるのでしょうか」
「いや、いないはずだ。養子を取るのではないかな、もうよいか、中将」
「クロプシュトック侯の事で伯父上を煩わせるなど、何を考えているのだ貴様は! 貴様は戦争でもしていればよいのだ。我らの事に口を出すな!」
「小官も口など出したくはありません」
「なんだと」
顔を真っ赤にして怒るフレーゲルにエーリッヒは静かに答えた。
「ですが、困った事に出さざるを得ないようです。クロプシュトック侯が此処に爆弾を持ち込んだかもしれません」
「爆弾」その言葉が黒真珠の間に静かに広がっていった……。
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