十五節:チヨメの実力・上
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を確認してから、漸く剣を下げ残心を解く。
絶対に安全なパターンを覚えて攻撃していたり、仲間と組んでいたり、派手な避け方を繰り返していては到底身に付きそうになく、何より“手慣れている”と窺わせる所作だった。
(……まさか、本当に一人で上がって来たの? あの子……)
グザの様な前例もある以上、闘うモンスターのランクや数さえ考えれば、レアモノと見受けられる武器の存在もあるのだし、一応可能な事ではあるだろう。
そう考察しながら影より観察するアスナの存在など勿論知る由もなく、黒髪の少女はやけに早く終わった事が想定外だったか、目をパチクリさせている。
だがすぐに我に返ると、背中にある鞘へ曲剣を収めて『アニールブレード』の彼へと振り向いた。
「え〜と、何か……早とちり、しちまったみたいだな…………ごめんなさい」
「あ……い、いえいえ! 寧ろた、助けてくれて、ありがとうございます……」
横取り行為だったかと頭を下げる少女に、彼は忙しなく手を振って謝らなくても良いと伝えている。
MMOでのモンスターの横取りは確かにマナーの良い行動とは言えない。
だが、少女の様に深々と謝る人物には余りであった事が無いのだろう……謝られた彼の方が少し慌てているように見えた。
その後彼らは幾つか言葉を交わし―――アスナには声が小さくて聞き取れなかったが、何やら彼が少女には分かり辛い言葉を放ったのか彼女が首を傾げている間に、『アニールブレード』の彼は迷う事なく森の奥へと足を踏み入れ、やがて消えて行ってしまう。
少女も呼び止めようとはしたらしいが、何時の間にやら去っていった彼に掛けられる言葉は、もう無かった。
何処となく『アニールブレード』の彼の背中が悲しげに見えたのが気になった事もあるが、アルゴ以来初めて出会った攻略集団に近い女性プレイヤーにも興味が湧き、アスナは一先ず話しかけようと樹木の影から出て黒髪少女へ近寄っていく。
「ちょっと、いいかしら?」
「……んお?」
木の幹の傍で何やら手を動かしていた少女は、アスナの背後からの呼び掛けにさして驚くことも無く……けれども何故か、素っ頓狂な声を上げて振りむいた。
近くで見てみれば男っぽい口使いに似合わぬ、意外と整った容姿を持っている事が分かる。
またアスナも並んで見て分かったが、キリトより身長が高く、少なくとも160cm代中半はあるだろうか。
必然的に少し見上げる形となりながらも、一つだけ咳払いしアスナは話をするべく、きり出した。
「私は、ゆう―――アスナっていうんだけど」
「あ……え〜と、オレはチヨメってんだ。……で、何か用事あるのか?」
危うく本名を言いかけながらもまずは自分の名
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