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大刃少女と禍風の槍
十五節:チヨメの実力・上
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…?」


 近い場所からプレイヤーとモンスターが闘っている事を窺わせる、“キィン!” といった金属質なサウンドが響いてきた。
 安全地帯とは言ってもモンスターがPOPしないか或いはモンスターが寄り付かないだけであり、今の様に音や声は普通に聞こえるし、遠目ならプレイヤーやモンスターの姿も確認できる。

 少々気になったアスナは、安全地帯ギリギリの樹木の影から覗き込んだ。


「やっ! ……こ、このっ!!」

 
 音の発生源であるプレイヤーは、先程までアスナも闘っていた【ウィンド ワスプ】と向き合っていた。

 声から男だと言う事は分かるが、兜の上から更にフードを被っている所為で顔が確認できない。
 右手にはキリトと同じ『アニールブレード』を、左手にはそこまでランクの高くない盾を持つあたり、標準的かつ安全性を第一に置いた装備のプレイヤーだと見える。

 アスナは一瞬だけ、キリトが変装をして武器を振っているのだと思っていた……


「はあっ!」
「“ヴヴ……カカチッ!!”」
「どわぁ!? おとととっ……!」


 ……が、間合いの取り方がお粗末すぎた。

 武器の振り方すら御世辞にも “なっている” とは言えず、寧ろ相手の攻撃を危なっかしくとも避けれてはいたり、武器に振り回されてもいないので幾分かマシなだけだ。
 加えて変装する理由も見当たらず、流石に彼がキリトだとはアスナも思えなかった。


「くっ、こいつ……!」
「“ヴヴヴ……!」


 若干ながら動揺した彼の隙を突こうと、【ウィンド ワスプ】は針を前に出し、飛行攻撃の予備動作を取る。


「! まだまだっ!!」


 不意に彼は腰へと手をやって恐らくはスローイングナイフであろう、武器を三つ投げ放つ。
 二つは狙いが反れたものの、一つは【ウィンド ワスプ】の腹部を鋭く掠め切る事に成功した。

 思ったより与えたダメージは大きく、予備動作を中断させるに足る一撃だったようだ。


「よ、よし―――」
「“!!!”」
「―――って、うぉわぁっ!?」


 安堵したのも束の間。
 すぐさま反撃の毒針攻撃が襲いかかり、彼は慌てて盾を構えるも捌き方が上手くなく、針攻撃がヒットし掛けてバランスを崩してしまった。

 それでもHPバーはワスプと比べずとも余裕で残っており、他のモンスターを引っ掛ける前には討伐できそうである。
 ……しかし、前線で戦い続けるには、アスナの眼から見ても聊か身のこなしが危うすぎた。

 とはいえ……此処でアレコレ口を出すのは彼女の性分ではない。

 武器や装備はそれなりに整っているのだし、大方キバオウやリンドが指南するだろうと、アスナは彼へ背を向け歩き出した。





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