MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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か!』
「わぁ……すごいね、私まだシュゼットしか作ったことないや……」
「私なんかクレープなんて作ったことないよ〜」
美幸の言葉に、明日奈が残念そうな声で答えて三人の間で朗らかな笑い声が起こる。ひとしきり笑って、ユウキの話は続く。
『他にも、そこのベンチでバーベキューしたり、パパと本棚作ったり、楽しかったなぁ……』
「バーベキュー……サチは、したことある?」
「うん、東北に住んでた頃、りょうと、しーちゃんと一緒にみんなで、りょうがお肉ばっかり食べるから、おばあちゃんに野菜も食べなさいって怒られてたよ」
『うひゃ、それウチではボクだったよ、ママがいっつもいうんだ、ピーマンとかナスも食べなさいって』
やや不満げに、けれど懐かしそうに言うユウキに、明日奈はほほえましさを感じて笑うと、少しばかり目を細めて言った。
「私の家では、そういうの無かったなぁ……」
明日奈の家には、十分すぎるほどに広い庭がある。けれどその庭で、母や父、兄と遊んだという記憶は明日奈にはなく、いつも一人で遊んでいた記憶だけがあった。だからなのだろうか、二人の話から見えるその景色は、深い憧憬となって彼女の胸を打った。
『あ、じゃあ、今度アスナのホームでバーベキューパーティしようよ』
「ほんと!?よーし、じゃあ、シウネー達も私の友達もみんな読んで思いっきりやろう!」
「あはは……沢山お肉用意しないとだね」
『ジュンとタルケンがめっちゃくっちゃ食べるから、ホントにそうした方がいいよ〜?』
「えー?ジュンはともかく、タルケンも?そんなイメージないけどなぁ……」
そんなことを話していると、不意にユウキは思わず、と言った様子で少しだけ寂し気な声を出した。
『でもさ、この家、取り壊されちゃうんだって』
「えっ……?」
「どうして……」
戸惑ったような二人の声に、ユウキは少し空元気を絞るように、あえて明るい声で答える。
『コンビニにするとか、更地にして売るとか、なんか、いろいろなこと親戚中みんなで言ってるみたいだけど……どちらにしても、この家は壊されちゃうんだってさ。ほんとは、パパの遺産でしばらくは残してほしいってお願いしたんだけど……ダメみたい。だから、その前に一度見に来たかったんだ』
そう言ったあと、明日菜の方のカメラからは、サーボ音が幾度も聞こえてきた。家の各所を、細かくズームしてみているのだろう。ユウキの思いがその音から伝わり、明日奈は反射的に思ったことを口に出してしまっていた。
「……じゃあ、こうしたらいいよ」
『?』
「ユウキ、今十五だよね?十六歳になったら、好きな人と結婚するの。そしたら、その人がずっとこの家を守ってくれるよ」
「あ、明日奈!?」
「え?……あっ」
美幸に突っ込まれてから、自分がかなり素っ頓狂なことを言
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