MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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た。
「……ね、明日奈、ちょっと聞いても良いかな?」
「え?あ、うん」
隣に座った美幸が、沈みかけた雰囲気を立て直すように明日奈とユウキを覗き込む、
「そのカメラ、学校内じゃないと動かないの?」
「えっと、ううん。携帯の電波が届く場所なら、バッテリーさえ持てば大丈夫だってキリト君は言ってたよ」
「よかった!」
ぽんっ、と手を叩いた美幸は、いかにも良いことを思いついた、といった風な笑顔を浮かべると、カメラの向こうのユウキを覗き込んだ。
「なら、今日はユウキと一緒に帰れるね、ユウキ、外でどこか行ってみたいところとか、ないかな?」
「へっ?」
「あっ、そうだよ!外にも行けるんだもん、とりあえずバッテリーが持つんだったら、どこにでも行けるよ!?」
何も彼女と共にいけるのは学校内だけではないのだ。そう気が付いたとたん、明日奈は目を輝かせて言った。そして……
「じ、じゃあ……じゃあね……!」
どこか急いたようにして、ユウキが口を開いた。
――――
「…………」
そんな二人、否、三人を校舎の連絡通路から見ている涼人の姿があった。無言のまま、ただじっと彼女達を見るその瞳からは彼自身がどんな心境で居るのか、その感情を読み取ることは出来ない。
「……?ちょっと、桐ヶ谷君?」
書類を抱えて前を歩いていた杏奈が、訝しげな顔で彼に声を掛けた。その視線が、涼人の視線に誘導されるように下を向く。
「(結城さんと麻野さん……と、例の子か……)」
「……あぁ」
ユウキの存在は、今日校内中に噂になっていたことから、杏奈も知っていた。ややぶっきらぼうにそう言って自分に追い付いてきた涼人の隣を歩きながら、杏奈は問い掛ける。
「……何かあったの、彼女達と」
「……あん?なんだよいきなり」
努めて感情を感じさせない声色で、涼人が問い返した。どこかつまらなそうに無表情のまま、杏奈は歩き出す。
「別に。ただ随分と貴方にしては珍しい顔をしてたから」
「……意味が分からん、普段からこういう顔だろ」
「……はぁ」
若干辟易としたような表情でため息をつくと、彼女は苛立ったように即座に振り向いた。
「……なんだよ」
「少なくとも、普段の桐ケ谷君は彼女達のことをそんな目で見たりはしないわ。何なの?その人を憐れんでるみたいな目」
「……ッ」
反射的に何かを変えそうとして、しかし珍しく、涼人は言葉に詰まった。その様子にますます苛立ったようにして、杏奈は涼人をにらみつける。
「貴方の問題にも価値観にも物の見方にも私はたいして興味ないけど、少なくともその目は止めなさい、自分だけが物を達観して見れてるって思ってる、そんな自惚れ屋を見てるみたいで、イライラする」
そのまま杏奈は再び振り向くと、涼人を置いてつかつかと
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