MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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来ねーなら』
心を、壊死させようとする……
『あの嬢ちゃんにこれ以上深入りしとくのはやめとけ』
────
「うん、そこまでで良いでしょう」
『は、はい!』
「さて――」
気が付くと、教諭の制止と共に朗読は終わり、明日奈は殆ど条件反射的に席に座り直していた。
『ど、どう?……アスナ、変じゃなかった?』
「…………」
『?アスナ?』
「うんっ?あぁ、うん、大丈夫。ユウキ、凄く上手だったよ?」
『本当に?アスナ、ちょっとボーッとしてなかった?居眠りしちゃ駄目だよ?』
「私はそんな事したことありませんっ」
失敬な!とでも言いたそうに小声ながらもきっぱりと答えた明日奈に、ユウキはクスクスと笑って返す。勿論、からかわれたのである。
────
その後、六限も同じように授業を受けて、明日奈は約束通りにユウキに学校内を案内しはじめた、予想外だったのは、放課後であるにも関わらずかなりの人数のクラスメイトが付いてきたことか……
「はあぁ、つかれたぁ」
『面白かったねぇ!』
「ふふっ、お疲れ様、明日菜」
心底楽しそうに笑うユウキとは対照的に、クラスメイトに囲まれたことで物理的にそれなり以上に消耗した明日菜が中庭のベンチに腰掛けて呟くのを、どこかほほえましそうに美幸がねぎらい、自販機で購入したミルクティーのコップを手渡す。
「さっきちょっと見えたけど、十人はいたもんね、はい」
「ありがとう。もうみんな興味深々だったよ〜ユウキもすぐ打ち解けてたし」
『みんなが良くしてくれたからだよ、ボクが一番楽しかったもん!』
ニコニコと笑いながら肩のプロープを見た明日奈に笑い返すようにうぃんと動いたカメラに同期してスピーカーからそんな声がする。その言葉に心底嬉しそうに微笑むと、彼女はミルクティーに口を付けて、ほぅ、と小さく息を吐いた。
空は少し冷たい風の吹く、冬の午後だ。少し早い放課後の校舎には、どこかで活動する野球部や吹奏楽部の声や音楽だけが遠く響き、静かな時間が流れていた。
『……あのね?アスナ』
「?」
不意に、ユウキが口を開く。
『今日は、ホントにありがとう。ボク絶対忘れないよ、今日の事』
「ッ……」
その言葉を、言葉通りの意味として受け取れたなら、どれだけ楽だろう?いや、あるいは言葉以上の意味など無いのかもしれない。ユウキにとっては、その言葉は真に言葉通りの意味を持つのだから。今日起きた出来事を、“生涯”忘れない、と。
「も、もう、何言ってるの?明日の授業だってあるんだから、三限が現国!遅れちゃだめだよ?」
「……うん」
わざと明るく言ってみたものの、自分の声が上ずる寸前のような気がして、不安になる。その気配を察されてしまったのか、あるいは単に偶然か、ユウキの返答はやけに静かだっ
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