暁 〜小説投稿サイト〜
SAO─戦士達の物語
MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
[4/14]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たが、ユウキの事情っ共に軽く説明すると、流石にこういう学校にいる生徒なだけに素早く事情を理解し、次々に自己紹介を始める、そんなこんなで本鈴が鳴り渡り、皆が席に付く。
教壇に立った老教師に日直の号令に従って礼をすると、明日奈の肩でもカメラが上下に動いた。
いつも通り始まった授業をいつも通りに受けるなかで普段と少し違ったのは、明日奈がユウキに見えるよう教科書となっているタブレット端末を少し高めに掲げて居たことくらいか、そんな授業の中……

「それじゃあ、初めから読んで貰いましょう。紺野木綿季さん、お願い出来るかな?」
「……はっ!?」
『は、はいっ!?』
危うくそのタブレットを落とし掛ける羽目になるほど、明日奈は驚いた。まさかいきなり、それも教師自らそんな発想をしてくるとは思いもしなかったのだ。

「無理かね?」
何という事もなく、初老の教師は訪ねた。それに明日奈が何かを答えるよりも前に、ユウキが答えた。

「よ、読めます!」
教師が生徒に指名をし、生徒がそれに答えた。こうなってはもう明日奈にはユウキに読ませる以外の選択肢はない。ユウキの代わりにその場で立ち上がると、彼女の視界に入りやすいよう、テキストをカメラの前に掲げる。

「よ、読める?」
ユウキの年は15歳、明日奈とは二つほど歳が離れているが、明日奈が受けているのは中学3年生の授業だ。学力に年齢的な差異はない、が、それでも明日奈は思わず訪ねていた。
ユウキ自身も緊張しているのだろう、ややふるえ気味ながらも、力の籠もったような声がスピーカーから響く。

「も、勿論。これでもボク、読書家なんだよ……?」
言って、一つ息を吐くと、ユウキはしっかりとした抑揚をつけながら朗読を始めた。

ハキハキと滑らかに前世紀の名文を読んでいくその声を聞きながら、明日奈は少しだけ目を閉じる。
胸のキャンパスに描き直した教室の風景の中には確かに、明日奈の隣に立って教科書を読む木綿季の姿が写し出されていた。

……いや、これは想像だけで終わる景色ではない。

近年、生命科学や脳科学など各種学問の発展に伴って、医学は凄まじい発展を見せている。極々近い未来には、HIVを根絶させ、AIDSを根治させる薬品が開発され、ユウキが現実世界に帰還する日が来るに違いない。その時には、この景色も現実の物となる。それだけではない、並んで共に学校へ通い、下校の時には他のみんなと共に――


『あの嬢ちゃんは、多分死ぬぞ』
「…………ッ」
――現実へと、引き戻された。

『お前が、頭のどっかで奇跡的に特効薬ができて嬢ちゃんのAIDSが治るとか期待してるんなら……その考えは捨てとけ』
その言葉が心の柔らかい部分を刃のように切り裂き。

『覚悟の話だ』
血を流させ

『その覚悟が出
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ