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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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りに行ったりしてさ……でも、ママと姉ちゃんと一緒にお祈りしながら、ボクはほんとはちょっと不満だった。ボクは、聖書じゃなくてママの……ママ自身の言葉で話してほしいって思ってたんだ』
空は暁と菫の色から濃紺へと変わりはじめ、一番星が朱く光り始めていた。

『でも、今この家をもう一度見て、わかったんだ。言葉じゃなくてママはずっと気持ちでボク達を包んでくれてた。ボクが最後まで、前を向いて歩いていけるように、祈ってくれてたんだって……やっとわかったよ』
白い家の窓際に、ひざまづいて星空に祈りをささげる女性と二人の少女が、明日奈にも見えるような気がした。どこか手が届きそうなその星空を眺めながらいつの間にか、明日奈は自分の中にずっとわだかまっていたものを吐き出し始めていた。

「私もね……もう、ずっと母さんの声が聞こえないような気がする……ううん、聞こえないの。向かい合って話していても、私の言葉も伝わらない、母さんの心も伝わってこない……本当に話してるのかも分からなくなっちゃうの……」
「明日奈……」
以前に話を聞いていた美幸が、気を遣うように視線を向けた。こぼれた言葉が、夜空に溶けていく。

「ユウキ、前に言ったよね?ぶつからなければ伝わらないこともある……って。どうしたらそんな風にできるかな……どうして、そんなに強くいられるの……?」
聞いたユウキはというと、どこか戸惑ったように言った。

『ボク、強くなんかないよ……?』
「そんなことない、ユウキはいつも、誰と向き合ってても、すごく自然に見えるよ。私はいつも、人の顔色を窺って、尻込みしてばかり……」
『うーん……』
少しだけ眼が得るように唸ったユウキはしかし、直後にどこか自嘲するように言った。

『でもね……ボクも現実世界にいたころは、自分じゃない自分を、いつも演じてたような気がする』
「えっ?」
『なんとなく、分かってたんだ。パパとママは、ボクと姉ちゃんに心のどこかでいつも謝ってた。だからボク、パパとママの為に、何時も元気でいなきゃ、病気なんか、へっちゃらでいなきゃ、って思ってた……だからこっちの世界にきてからも、そんな風にしかふるまえなくなっちゃったのかも』
「…………」
『ホントのボクは……もしかしたら、世界中何もかもを恨んで、毎日泣き喚いてるような……そんな子なのかもしれないよ』
「……ユウキ……」
『でもね?ボク、演技でも良いって思うんだ。たとえふりだけだったとしてもさ、それで笑顔でいられる時間が増えるなら、全然かまわないじゃないって、さ。ボクの時間って、もうあんまりないから、遠くから、気持ちの端っこを突っつき合ったり、する時間がもったいないって、どうしても思っちゃって。だから最初からどーんっ!ってぶつかっていってさ、それで嫌われてもいいやって思うんだ。その人
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