MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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ごく単純な物だが、実はこのシステムにはもう一つ、ちょっとした仕組みがある。
視覚情報を送るためのカメラが、VR空間内のユウキの視界や動きと同期するようになっていて、彼女の見たい方向を自由に見ることが出来るのだ。ユウキからすると、彼女は今、アスナの肩の上にちょうどユイくらいの妖精サイズで乗っているような感覚になっているはずである。
ちなみにこのシステムは元々、和人がユイのために涼人などを巻き込んで始めたシステムなので、そういう意味でもちょうどユイサイズ、というわけだ。
カメラの初期設定を終えた和人が、「さてと」と、パソコンから明日奈に視線を返した。
「それじゃ、これでとりあえずはおしまいだ。一応スタビライザーは組み込んであるけど、急な動きは避けてくれ。マイクの集音性も十分なはずだから、大きな声で話したりはしないように」
「了解、りょーかい、り ょ う か い」
あれこれと注意事項を並べ立てる和人に、明日奈はせかせかと返事をする。苦笑して片づけを始める和人に見せつけるようにわざわざゆっ……くりと立ち上がって、明日奈は悪戯っぽく笑いながら教室を出た。
校舎を移るべく、中庭に差し掛かると、ユウキが一等大きな歓声を上げる。
『うっ、わぁ!おっきい学校だねぇ!』
「ふふっ、ごめんねユウキ、ホントは学校の中を案内したかったんだけど、昼休み終わっちゃうのよ」
『いいよ、授業見学するの、すっごく楽しみ!』
本当にうれしそうに声を上げるユウキに、アスナは小さく微笑む。弾む足取りで、次の授業にユウキを参加させる許可をもらうために、職員室へ向かった。
が、そこかしこの景色を見てはその都度歓声を上げていたユウキが、目的の職員室の前まで来ると急に静かになる。それどころか……
『はぁぁ……』
この重たいため息である。
「?ど、どうしたの?ユウキ」
『あ、えっと……その、ボク昔から苦手だったんだよね、職員室……』
あまりに深刻そうな声を出した後のその発言に、思わず明日奈は吹きだした。
『あぁ、笑ったあ!ひどぉい!』
「ふふっ、ごめんごめん、意外な……弱点?だったから。まー、でも大丈夫大丈夫、この学校の先生ってなんていうか……先生っぽくないから」
苦笑しながらそんなことを言って、職員室の扉を開ける。
「失礼します」
「し、しつれいしまぁす!」
自分の後に続いて挨拶をしたユウキにクスリと笑って、明日奈は目的の人物、次の現国の教師を探す。と、そこには、先客がいた。
「うん、いいでしょう、頑張りなさい」
「ありがとうございました」
差し出した書類を見て一つうなづいたその教師に頭を下げているのは、美幸だった。
「うん?おや、結城くん」
『ふぇ?』
「あっ」
「?明日奈?」
此方に気が付いた教諭が明日奈の
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