MR編
百四十一話 母の祈り、母の言葉
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翌、1月12日
午後12時49分
第二校舎 三階北端 電算機室。
遠く、昼休みの廊下から響く声が聞こえるこの場所で、明日奈は背筋を伸ばした綺麗な姿勢で座っていた。どこか緊張したような面持ちでソワソワと時計を時折眺めるその前で、和人と他に二人、彼と同じメカトロニクスコースの生徒が端末を覗き込んでいる。
「カズお前、これじゃ遊びなさすぎんだろ……こないだ試したじゃねぇか。遊び無くして、俺がどうなったか忘れたっていうんじゃねーだろうなぁ?」
「あぁ、あの時のトシの顔は面白かった。ほんとに吐きそうだったもんな」
「水道まで連れてくほうは気が気じゃなかったけどな〜」
「そういうこといってんじゃ、ねぇ」
「「あたっ」」
ぽこっ、と生徒の一人が和人ともう一人の脳天に軽いチョップを加える。二人は苦笑しながら画面を再び覗き込むと、和人のほうが肩をすくめた。
「けどなぁ、遊びがでか過ぎると挙動によっては、ラグるだろ?」
「そのために、お前の兄上特性の最適化プログラムがあるんだって、期待できないわけじゃないんだろ?」
「まぁ、な」
本人もそれなりに工夫してたみたいだし、と、和人が苦笑して息を付く、そうしていよいよもってソワソワし始めた明日奈を見て、パシ、と手を叩いた。
「よし、それじゃあ初期設定はこれで済ませよう、ユウキさん、聞こえますか?」
『はーい、聞こえまーす!』
不意に、和人が明日奈に向けて呼びかけた。もちろん、和人は彼女のことを他人行儀にユウキさん、などと呼んだりはしない。彼が呼びかけたのは、アスナの肩に乗った、透明なアクリルのドームで包まれた機械に向けて、だ。
アルミを切り出した基幹部にハーネスで固定されたそれは、ソケットから二本のケーブルがつながっており、片方が和人の使うパソコン、もう片方は、アスナの携帯端末につながっている。
その機械につけられたスピーカーから和人の呼びかけに答えるようにして《絶剣》、ユウキの声が響いたのだ。
「それじゃあ今から、レンズ周りおの初期設定をしますんで、視界がクリアになったら言ってください」
『はいはーい!』
明日菜が今つけているのは、和人と彼の仲間たちが開発した、《視聴覚双方向通信プロープ》と呼ばれる機器だった。
これは簡単に言うなら、現在アミュスフィアなどを使っているユーザーに、ある一定の条件を満たした端末からネット回線を通じて、遠隔地の視覚、聴覚の共有を行うというシステムだ。
現在アスナの肩に乗っているこの機械からは、音と映像、つまり、人間が得る視覚、聴覚の収集情報がデータとしてアスナの携帯端末に送られている。その端末からネットを介して、ユウキの居る横浜港北総合病院に送信されたデータが、メディキュボイドの中にいるユウキに届く。仕組みとしては
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