第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
7話 互いの進む先
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なんているかしら?」
ふと思いついたように、顎に指を当てたグリセルダさんが問いかけてくる。
心にあった清涼な余韻は押し流されるが、されど友人の質問を蔑ろにする事も出来ない。
「布系防具を着ていれば嫌でも世話になるからな。それなりに知ってると思うぞ」
金属防具であれば《鍛冶師》で剣ごと修繕を依頼できるが、布系の装備はそうも言っていられない。
ヒヨリも取得している《裁縫》スキルを習得しているプレイヤーはごく僅か。故に、お針子として商売人の域に達しているものの奇人変人に属する《アシュレイ》や《ローゼリンデ》、性癖に難のある異常者だが付き合いの長い《リゼル》には世話になることも少なくはない。客が職人を選べない業界。それが《お針子》である。
「だったら、一つお願いを聞いてもらいたいの。厚かましいような気もするけれど、いいかしら?」
「どうせ装備の修繕を頼むところだったから構わないけれど、何をすればいい?」
「ふふ、やっぱり持つべきは親友ね。これを白系統に色彩変更してほしいのよ。それとこれは一旦預かっておいて」
いつの間に親友へ格上げされたのやら、考える間もなく渡されたのは女王のLAボーナスである漆黒のシースルーなベールと、クエストリワードである《クルジーン》が手渡される。
やはり単純な黒の色彩はお気に召さなかったとなれば、思い切った変更は理解できなくもない。それでもクルジーンを渡される意味は、俺が解き明かすには困難を極める。それだけで真意に辿り着くとは分かっていながらも、ただひたすらに二品を凝視する俺に笑いを零したグリセルダさんが再び話し始める。
「私達、まだ結婚式っていうのをやってないんだ。こんなところだけど、こうして親友と出会って真面目に旦那とも向き合えそうなわけだし。そこで今しかないかなって思ったわけよ」
この先、花畑みたいな層が有効化されれば文句無しね。などと、悦に入ったグリセルダさんは一人呟く。思い立ったが何とやらを地で行くような彼女の生き様には感服させられるが、しかし無計画なように思えてならない。こういうことは、一人で浮足立っても良い様にはならないような気がするのだが。
「思ったわけよ、じゃないだろ。染色したあとのアイテムはどうするんだよ?」
まさかグリセルダさんから「結婚式しようぜ。お前、新郎な!」などと言いだすわけではあるまい。
ただでさえベールはレアアイテムに属する。クルジーンだって、クエストを周回すれば無数に手に入るだろうが、それでも難易度的に決して容易に入手できる武器ではない。そんなアイテムを簡単に出されれば、旦那さんのプライドはどうなってしまうのだろうか。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ