第1章始節 奇縁のプレリュード 2023/11
7話 互いの進む先
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「でも、無理はしないでね。独りで抱え込んじゃダメよ」
「分かった。何かあったら相談するから、その時はまた話でも聞いてくれ……今は、もう少しだけ頑張ってみる」
もしかしたら、ただ怖かったのかも知れない。
キバオウの激励に意味を見出せず、ただの同情の為だけに発せられたその場凌ぎだったのではないかと疑っていたこともあったし、前線から排斥された後にヒヨリを引き抜こうとするギルドだって少なくはなかった。縋る相手などいないと思い込み、ましてや前線で戦い続ける理由まで奪われそうになった恐怖は、斯くも俺を消耗させていたのだろうか。
しかし、最前線にはおらずとも攻略を目指すプレイヤーは間違いなく存在するのであって、彼が言おうとしていたのはまさしくグリセルダさんのような誰かのことであるのは理解していた。それでもこうして目の当たりにしないと認めようとさえしなかった。どんなにキバオウやヒヨリやクーネ達が助けてくれたのに、俺は仲間に自分の《疲弊》を見せる事が、助けを求めることが出来なかった。
――――本当に、どこまでも情けない。
思わず零れた自嘲の笑いは、それでもこれまで吐いた溜息よりずっと気が楽に感じた。
「ま、これでお互い何かしら整理がついて良かったわ。それに意外と、歳の離れた間の友情ってもの成立するのね」
「自分から友情とか言われると、すごい否定したくなるが………そうなんだろうな。そういうのもあるんだろう」
偶然フィールドで会って、モンスターに襲われていたから助けて、成り行きでクエストを一緒にクリアした。俺の中ではまだ実感がないから頷いて答えることは難しいが、フレンド登録まで済ませていれば、あながち否定はしづらい。ヒヨリだったら、こういう時は素直に受け入れてしまえるのだろうか。本当に、羨ましい性格だと思う。不覚にも、俺もそう在りたいと思わされるところがまた癪だ。
「じゃあ、そろそろ戻りましょうか」
「俺も情報屋にクエスト情報を渡しに行かなきゃいけないし、次の仕事もある」
「私も、旦那に分かってもらえるよう頑張ってみるわ。じゃないと、せっかく教えてもらった情報が無駄になっちゃうし」
「頼むから無駄にしないでくれよ」
「分かってるわよ。なんたって私の旦那さんなんだから」
それは果たして自信を持ってよいのだろうか。
グリムロックさんとやらの為人を知らない俺にとっては返答に困るところだが、深い追求は無意味と悟る。旦那さんを説き伏せるのはグリセルダさんの役目だ。俺がまだ見ず知らずの彼について伝聞の情報を知ったところで何も始まらないし、この事についてはグリセルダさんの裁量を信じる他ない。
「………っと、そう言えば、スレイド君は知り合いにお針子さん
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