暁 〜小説投稿サイト〜
天使の箱庭
シーン6〜7
[5/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
りよく覚えてないみたいなんですよ。」
     
春香「そうですか。」
     
野口「そうだ、警備室のモニターに奴が映ってるかもしれない。僕ちょっと見てきます。」
         
野口、部屋を出ていく。                              
春香、携帯を取り出し電話をかける。しかし相手は出ない。
イライラしながら何度もかけなおす春香。                           そこへの30代半ばくらいの夫婦が静かに入ってくる。                       
春香のそばに並んで座ると春香をそっと見つめる二人。                
春香、携帯をしまい、カバンから手帳を取り出してページをめくる。          
ふと視線を感じ、夫婦と目が合う。お互いに軽く会釈。
     
春香「あの…、その辺で制服姿の男性を見かけませんでしたか。」                                                     
 妻「さあ…、そんな人いたかしら。(夫に)あなた気が付いた?」 
      
 夫「いや。」
     
春香「そうですか。もしかして、お二人はバス事故の関係者の方ですか?」
      
 妻「関係者って言えば、まあ、そうなるかしらね。実は娘をね…」
     
春香「犠牲者のご遺族ですか…」
         
夫婦、困ったように顔を見合わせる。
     
春香「そうですか…。それはお気の毒に… お悔み申し上げます…」
        
春香、パソコンの机に戻り、席に着く。 
      
 夫「まあ、人生何が起こるかわからないものだが、突然、家族や親しい人を亡くすってのは
   辛いもんです。」
     
春香「ご遺族の方のお気持ちはよくわかります。私も10歳の時に事故で両親を亡くしているので。」
      
 妻「そう…。ご苦労なさったのね。」
     
春香「苦労というほどのことは…。独身でOLをしていたおばが姉と私を引き取って
   育ててくれたんです。そのおばも2年前に亡くなりましたが…」
      
 妻「そうなの…」
      
 夫「残された者も辛いが、死んだ者にとっても遺族のことが心残りなものらしいですよ。
   (春香に)あなた、どうして仏壇の位牌がこちら側を向いているか知ってますか。
   死んだ者が遺族のことを見守る為だそうですよ。           
   あなたのご両親もきっと、いつもそばにいて、あなたのことを見守ってくれているはずです。」
         
夫婦、春香を見つめて微笑む。しばしの沈黙のあと 
   
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ