シーン2
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「お忙しいところ恐れ入ります。月刊スクランブルの島田と申します。」
二人は名刺を交わす。
「まあ、どうぞ、おかけになって。」
すすめられ、春香は今座っていた席につく。野口が向かいに座る。
「PTSDの取材だそうですね。」
「ええ。PTSDについて一般の方に理解を深めていただくためにも、
是非取材させていただけないでしょうか。」
「私でお役に立てるんでしたら。」
「ありがとうございます。グループセラピーはこのお部屋で?」
「そうです。二週間に一回ここで。」
部屋は長テーブルが並び、講習室のようだ。
セラピーの時は机を後ろに寄せて、椅子を輪にして座るという。
「それでみなさんのご様子はいかがですか。」
「ええ、夜眠れないとか、無気力だったり、あとは怒りっぽくなったり、
ちょっとした音にびくついたり。さっそく典型的な症状が出始めていますね。」
「あの、できれば、グループセラピーの様子を見学したいのですが…」
「それはまだちょっと…。」
「だめでしょうか?」春香が前のめりになる。
「時期的にまだ微妙でしてねぇ。」
「今すぐにというわけではないんです。もちろん、患者さんたちの許可を得た上で
見学させていただけたらと…。」
野口は足を組むと、膝を両手で抱えた。
「まあ、機会を見てみなさんには話してはみますが…、まだセラピーも始まったばかりですし…。」
すると、野口が春香の服装を見て、にやりと笑う。
「黒ずくめ… なんですね。」
「あははっ…、このスーツ地味でしょう?」
「いいえ、よくお似合いですよ。」
「そういえば、仕事着は黒ばっかりだわ。
色の組み合わせをいちいち考えなくていいし、汚れも目立たないんで。」
「わかります。僕も黒は好きですよ。」
「先生も? 黒を好む人って心理学的にみると何か特徴ってあるんですか?」
「そうですねぇ…。黒い服を好む人は、感受性が鋭くて、自立心が強い。
だから他人に指示されるのを嫌う傾向にある。」
「あら、当たってるかも…。」 春香がぺろっと舌を出す。
「でも、黒い服を着る人すべてが強い自己主張の持ち主かって言うと、
そうとも限りらないんですけどね。中には、恐怖から解放されたいっていう
深層心理を秘めている人もいたり。」
「恐怖?」
「そう。たとえば、心が傷つくような事件や病気を体験した子供に絵を描かせると、
黒を多用する傾向が強いんです。強い色である黒を使うことで、弱い立場から
強い自分になろうとするわけですね。大人の場合も、黒を好むのは
強い自分への憧れからかも知れません。」
「へぇ〜、なるほどねぇ。好みの
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