暁 〜小説投稿サイト〜
dark of exorcist 〜穢れた聖職者〜
第34話「刻み込まれた記憶・2」
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ダメだ。
こうなったらもう僕に断るという選択肢はない。
彼がそれを許さないだろう。

この人は噂の真偽を理解しているんだろう。
フォールマンが被害に遭っていると断定している。
そのうえで同じ立場の僕をポーランドに送り込むつもりだ。



「……同じ立場なら、その痛みも理解できる………ということですか……」

「そういうこと。君ならフォールマンの気持ち……痛みを理解してあげられる。適任だと思ってね」



「…………痛み……そんなものじゃないですよ。……その程度のものじゃない………」









"悪魔の末裔め"

"近寄らないでよ、化け物"

"消えろクズめ"

"この疫病神が"

"お前に居場所などあるものか"




ただ純粋な人間ではないというだけで、心と身体を悲惨なほどに虐げられてきた。


数えきれないほどの暴力を受けてきた。

耳を塞ぎたくなるほどの暴言を浴びせられた。


毎日死にたくて、消えたくて仕方がなかった。



負の感情は少しずつ高まり、やがて悲しみは憎しみに変わった。

自分以外の人間が、虐げられるだけの自分が、理不尽なこの世界の全てを憎んだ。


自分を虐げた人間を何度も何度も何度も何度も何度も、頭の中で殺した。

それで気持ちが晴れるわけがないと分かっていながら。









もし、ポーランドにいる"悪魔の子"が自分と同じフォールマンなら………


………さぞこの世界の理不尽を憎んでいることだろうな……




「……救ってあげられるのは僕だけ……か…」

「やる気になったかい?」




「………分かりました。行きますよ、ポーランドに。助けられるか保証は出来ませんが」

「構わないよ。君なら救い出せるさ。例え助けられなかったとしても、その時は弔いたい。頼んだよ」








こうして、クリスはポーランドへ向かった。


















―――【ポーランド・とある地域 古びた教会】



「ここ……ですよね? 地図を見た限りだと、教会ってここだけ…だもんな」

古い教会の木の扉の前に、黒いフードを目深に被り、地図と教会を交互に見つめる少年がいた。
正体はもちろんクリスだ。
フォールマンだとすぐにバレると非常に面倒なことになると思い、多少怪しくてもフードを被ってきた。

「………入るか」

クリスは持っていた地図を畳んでズボンのポケットに突っ込み、木の扉に手をかけた。







古びた教会の扉の先には、簡素な木製の長椅子
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