第五話 姉の苦悩その十三
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「僕もだよ」
「お酒を飲むならね」
「お家でボトルを空けて」
「それでおつまみを出して」
「ここで飲むものだよ」
「一人か私と、よね」
「それか龍馬とね」
つまり心を許した相手と、というのだ。
「飲むけれど」
「ああした場所で飲まなくてもお酒は美味しいわよ」
優子はこの持論も出した。
「他の人の趣味には口を出さないけれど」
「姉さんはしないね」
「そうした飲み方はね」
決して、と言うのだった。
「しないわ」
「そうだよね」
「そうした場所には行ってないわ」
優子は弟にあらためて言った。
「若し行ってたらこんなに帰りも早くないでしょ」
「それはその通りだね」
そうした店は夜に営業しているからだ、そこに通っていれば自然と帰りも遅くなるのは当然のことである。
「言われてみれば」
「だからよ」
「そうした場所じゃなくて」
「落ち着いた清らかな場所にね」
「最近行ってるんだ」
「心はね」
優子はラムの味を口の中で楽しみつつ言った。86
「すぐに乱れるけれど」
「落ち着くこともなんだ」
「少しのことでね」
「そうなるんだね」
「揺れ動きやすいものだから」
「止まることもなんだ」
「些細なことでそうなるのよ」
こう優花に話した。
「今の私はまだ揺れてるけれど」
「落ち着くよね」
「そうなりたいわ、けれど」
「けれど?」
「落ち着いたらね、完全に」
その時はと言うのだった。
「きっと話せるわね」
「誰に?」
優花は姉の今の言葉に問い返した。
「お話出来るの?」
「それはね」
優花のその目を見つつの言葉だった。
「誰かとは言えないけれど」
「それでもなんだ」
「言わないといけないわね」
「最近そのことで悩んでるの?」
「まあね」
その相手にだ、優子は真実を隠して答えた。
「そう思っていたしいるから」
「最近毎日だったんだ」
「飲んでるのよ、これ言ったわよね」
「うん、確かにね」
「けれどね」
「お寺とか行くようになって」
「気が晴れて落ち着いてきてね」
そうなってきたからというのだ。
「まあ心が澄んできたっていうか」
「それでお酒も減ってきて」
「何時かは」
まだ遠いと思っていた、言う時は。
しかしその時は朧ながら見えて来てだ、こう言うのだった。
「言えるわね」
「早く言えたらいいわね」
「ええ、そうするわね」
ここでも本人に言うのだった、何も知らない彼に。
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