第二十六話 困った子ですその五
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「話聞くだけでわかったのに」
「何で本人が気付かないのよ」
「本人って誰よ」
私にはどうしてもわからないです。
「今そういう話じゃないじゃない」
「まあいいから」
「いいからって」
「全く。何でそんななのよ」
今度は呆れたような声でした。
「ちっちは。鈍過ぎるわよ」
「そうよね。何なの?っていう位に」
「鈍いの?私って」
何か悪口を言われまくってる気分です。凄く気分悪いのは事実です。
「何の話かもわからないんだけれど」
「鈍いわよね」
「ねえ」
皆から言われました。
「そもそも気付かないっていうのが」
「私達がわかるのにね、本当に」
「やっぱり全然わからないんだけれど」
「わからなかったらわからなかったでもういいわ」
匙を投げられたような言葉でした。
「それでもね。とにかく」
「その阿波野君?だったわよね」
「ええ」
「大切にしなさい」
今度はこう言われました。
「彼はね。いいわね」
「大切にするの」
あの能天気な顔が頭の中に浮かんできて。それだけでかなり嫌な気分になります。けれどそれでいて放っておけないって気持ちにもなるのが不思議です。
「あの子を?どうしてなのよ」
「今まで言った中にヒントあるから」
「それもすぐにわかるレベルでね」
すぐにわかるって言われても実際にわからないです。何が何なのか。
「とりあえずね。またあの子と会うことあるわよね」
「大教会一緒だから」
これが大きいです。天理教はかなりおおまかに分けて大教会と地区ごとに分かれます。地区は都道府県で分けられていましてこれはこれで重要ですが大教会も同じです。同じ大教会に所属しているとそれこそ一生顔を合わせるような関係にもなります。つまりあの子とも。
「会うわね、やっぱり」
「縁よね、本当に」
「そうよね」
「縁、ねえ」
こう言われてもやっぱり何か楽しくないです。
「あんないい加減な子と知り合うなんて」
「果たして本当にそうかしらね」
「そこんところもわからないわよ」
今度はこう言われました。
「よく付き合ってみないとね」
「私達だってそうだったじゃない」
「言われてみれば」
確かにその通りです。隠された部分って中々わからないですし見つからないです。単純だと思っていた人が意外と複雑だったりその逆だったりっていうのは。よくあります。
「だからね。その阿波野君とも話してみたら」
「デートもしたりしてね」
「デートって」
また変なことを言われだしました。
「何でまたそういう方向に話がいくのよ」
「いいじゃない、ちっちももう高校三年生」
「デートの一つや二つね。経験してみたら?」
「経験って。そんなのは」
今度もムキになっている自分に気付きます。
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