第二百五十話 信長の先陣その三
[8]前話 [2]次話
「あれは効果がありました」
「だからこの度もか」
「言うなればです」
「また十面埋伏をするのじゃな」
「左様です」
こう信忠にも答えたのだった。
「まさに」
「そうか、ならわかった」
「はい、三国志演義にありましたが」
原田はこの書から話した。
「あの様にします」
「曹操孟徳のじゃな」
「そうです、あれのさらに大がかりで」
「諸将を一度に繰り出す」
「あの時は十の軍勢をそれぞれ出しましたが」
信長がしたのもそれだった、彼はまさに三国志演義のそれをして戦に勝ちそして尾張を手中に収めたのだ。
「この度は一度にします」
「そういうことじゃな、ではな」
信忠は確かな顔出頷いた、そしてだった。
彼は全軍を的確に動かしていた、本陣において全体の采配を淀みなく行っていた。大谷はそれを見て石田に言った。
「これはな」
「うむ、これだけの軍勢を的確に動かせる」
「既に政では見事なものを見せておられる」
織田家の嫡男として政も行ってきたがそれもというのだ。
「ではな」
「政戦両略の方」
「まさに天下の器であられるな」
石田にこうも言うのだった。
「そうじゃな」
「そう思う、天下は上様の後もな」
「磐石じゃ、それでだが」
「これからのことじゃな」
「我等も励もうぞ」
「己の責にな」
「そしてじゃ」
己の責務を果たしてというのだ。
「天下を泰平、そして長い繁栄のな」
「礎を築く為のな」
「足の一つとなろうぞ」
「天下は足が幾つも必要じゃ」
石田も言った、この様に。
「だからな」
「わし等もそのうちの一足じゃ」
「わしはこれまでどうもわしがわしがじゃった」
石田は己を振り返って述べた。
「しかしそれではな」
「やっとわかったか」
「わしは平壊者じゃ」
自分で言うのだった。
「我が強く何でも言わずにはおれぬ」
「相手が誰でもな」
「それが正しいと思えばな」
「己を曲げぬのは御主のいいところじゃが」
しかしというのだ。
「それが時としてな」
「悪いことになるな」
「天下にも御主にもな」
「抑えることも大事じゃな」
「周りを見てな」
そのうえでというのだ。
「何でも言っていいものではない」
「その言葉も抑えてか」
「そうじゃ、そうせよ」
こう石田に言うのだった。
「御主は心根はいいのじゃ」
「そうか」
「うむ、清廉潔白で思いやりがある」
大谷は石田の親友だ、それで彼のそうしたこともわかっているのだ。それで彼自身にもそのことを言ったのである。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ