巻ノ三十六 直江兼続その五
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「寝るぞ」
「はい、それでは」
「これで止めましょう」
実際にこう言ってだった、十勇士達は幸村の言葉に従いそしてだった。
彼等はこの日の酒を止めてそして早くに寝た。それから朝にも早く起きてだった。そのうえで鍛錬に励んで朝食を摂った。
宿を出ると春日山への旅の再開だった、ここで。
幸村のところにだ、兼続は彼のところに来て馬を並べて言って来た。兼続は馬に乗っており幸村も上田から連れて来た赤い愛馬に乗っている。
「昨日の宿は如何でしたか」
「休ませて頂きました」
穏やかな声でだ、幸村は答えた。
「存分に」
「それは何よりです」
「越後に入ってからの下にも置かぬ扱い」
それのこともだ、幸村は言う。
「満足させて頂いています」
「その様にしていますが」
兼続は幸村の言葉に微笑んで言った。
「では春日山に着いてからも」
「その時からもですか」
「もてなして頂きますので」
だからというのだ。
「ご期待下さい」
「人質である我等をですか」
「確かにそうなりますな」
幸村自身が人質と言うとだ、兼続も否定しない。
「貴殿達は」
「それでもですか」
「はい、貴殿達は真田家より預かった方々です」
だからこそというのだ。
「存分にもてなして頂きます」
「礼儀ですな」
「そうです、義です」
兼続は幸村に礼儀のその下のところを為す字を述べた。
「これは義なので」
「守られますか」
「当家は義を以て全てと為しています」
上杉家の考えもだ、兼続は幸村に話した。
「このことは先代の謙信公からですが」
「あの方は確かに」
「はい、戦国の世に義を貫かれていました」
「そしてその義をですか」
「受け継いていますので」
それ故にというのだ。
「人質として預かっていましても」
「それでもですか」
「礼儀を尽くされて頂きます」
「その義もですか」
「礼儀だけでなくです」
さらに言う兼続だった。
「仁義、信義、忠義、孝義、悌義」
「あらゆる義をですか」
「守り貫くことを家の掟としています」
「あらゆる義を守り」
「この世に生きていくと誓っております」
「それ故に」
「当家と真田に何があろうとも」
戦、それを言外に込めての言葉だ。
「貴殿に害を及ぼすことはしませぬ」
「では」
「はい、その際はお帰り下さい」
上田にというのだ。
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