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9部分:第九章
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は負けるよ」
 誰もがこう思っていた。思わせる敗北だった。
「あれはどうしようもないさ」
「山口も打たれたし」
 その剛速球が打たれたのだ。山口はこのシリーズ連投だった。その連投の疲れが出てしまったのだ。如何な豪腕といえど人である。疲れもあるのだ。
「切り札はもうないだろ」
「終わったよ」
 彼等は口々に言う。
「さて、長嶋の胴上げか」
「やっぱりミスタープロ野球には晴れ舞台だよな」
「そうだな」
 所々でそんな話になっていた。その朝本田は苦虫を噛み潰したどころではない顔で出社してきた。しかもその身体からは強烈なまでの酒の匂いを漂わせていた。
「飲んだんだね」
「ああ」
 憮然とした顔で隣にいる小坂に答える。

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