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8部分:第八章
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り上だろうね」
「巨人でいうと別所や堀内の極盛期よりも上か?」
「間違いないよ」
 小坂もそれは認めるところだった。
「あれだけ速いのは見たことがないね。球威も」
「打てるものじゃない。あれだけ凄いのはな」
「けれど何か今の本田君の言い方気になるけれど」
「今山口は二十五歳だ」
 本田はそこを指摘した。
「一年目だ」
「けれどまだ二十五歳だよ」
 ここでは年齢に関する本田と小坂の認識の違いが出た。本田はもう二十五歳と考えていて小坂はまだ二十五歳と考えていたのだ。
「まだまだいけるじゃない」
「普通のピッチャーならな」
 しかし本田はまだ言う。真剣そのものの顔だった。
「大丈夫だよ。けれどあの剛速球だ」
「一六〇は出てるね」
 これが重要だった。
「それとあの球威。それがどうかしたの?」
「身体にかかる負担は尋常じゃない。ましてあまり大きくないしな」
「そこ?問題は」
「何年持つかわからない」
 本田の言葉はかなり悲観的なものだった。少なくとも小坂にはそう聞こえる。しかしそれでも本田は言うのだった。
「山口がいなくなったら。阪急は無敵じゃなくなるな」
「いる間は無敵でも」
「いる間はな」
 これに関しては全く否定しないのだった。本田も。
「今の巨人じゃ打ち崩すのは楽じゃないぞ」
「そうだね。その時は確実に苦戦するね」
「阪急が勝つ。覚悟しておけよ」
 こう言うのだった。その年阪急は山口の恐るべき剛速球で日本一となった。最下位になった巨人は追い詰められた苦しさから必死に特訓を繰り返しそのうえ様々な工夫や補強を行ったうえでペナントを迎えた。その結果彼等はリーグ優勝を果たした。最下位から優勝という劇的な胴上げだった。

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