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第七章

「どうだ」
「どうだって言われましても」
「本当に飲んだよこの人」
 流石に皆驚きを隠せない。その前にも随分飲んでいたからだ。しかも。
「もう一升いくぞ」
「いや、それは幾ら何でも」
「無理ですよ」
「言った筈だ、阪急は巨人に勝つと」
 理由になっていない。彼以外にはそうとしか思えない。
「それなら。いける」
「で、飲むんですか」
「これでよし」
 何故かこの言葉を出してまた飲みだす。やはり一気だ。しかしそれを飲み終えたその時だった。
「・・・・・・・・・」
 杯を落としそのまま後ろに崩れ落ちる。そのまま倒れた。
「えっ、本田さん」
「大丈夫ですか!?」
「これ大丈夫じゃないぞ」
 後輩達も同僚達も慌てて彼のところに集まる。しかし彼は動かない。
 そのまま倒れ伏したまま病院に担ぎ込まれる。急性アルコール中毒だった。だが彼は死なず平気な顔で退院してきた。恐ろしいまでの生命力だった。
「無事で何よりだったよ」
「俺が酒で死ぬか」 
 こう迎えに来た小坂に対して告げる。自信に満ちた声で。
「酒は男を磨く水だぞ。その酒で」
「お酒は楽しむ為に飲むものだと思うけれど」
「俺にとってはそうなんだよ。男を磨いて女を艶やかにする」
 少なくとも後者はその通りだ。
「それが酒って飲み物なんだよ」
「そうだったんだ」
「とにかく。来年だ」
 酒の次はやはり野球だった。
「いや、今年か」
「年が変わったからね」
 小坂が彼に答える。
「そうなるね」
「そうだ、今年だ」
 また小坂に対して告げる。
「今年はな。阪急が巨人をはじめて破るめでたい年になるぞ」
「うん」
 いつもの様に茫洋と彼の言葉を聞く小坂だった。そう言われても受け入れることのできるものがあるのだ。そうした意味で彼もかなりの人物だ。
「それを誓っての酒だ。また飲むぞ」
「お酒より前にさ」
「仕事か」
「君しか阪急の記事書けないからね」
 微笑んで彼に述べる。
「だから凄いことになってるよ」
「じゃあ発行部数もかなり落ちたんだな」
「ああ、それは大丈夫だったよ」
 それについてはフォローを入れる小坂だった。
「それはね」
「大丈夫だった!?」
「うん、君が急性アルコール中毒になったじゃない」
「ああ」
 今退院した本人だからわかることだった。
「その時の顛末や王さんのホームランの時の君を特別に漫画にして短気集中連載にしたんだ。それで君のいない時は埋めておいたんだ」
「漫画でか」
「駄目だったかな」
「いや、誰か知らないけれどよくそんなの考えたな」
「君の奥さんだよ」
「あいつが」
 女房のことが話に出て妙な顔になる。怪訝なものになている。
「またどうしてあいつが?」
「奥さんが常務に
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