7部分:第七章
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専務に働きかけてね」
「専務っていうと」
これで彼はわかった。専務というのは前の部長だ。つまり本田にとっては義理の父にあたり彼の妻にとっては実の父だ。そういうわけだったのだ。
「あいつ。そんなことを」
「知り合いの女流漫画家に頼んで。そうなったんだ」
「そういうやり方もあるんだな」
「漫画って正直凄いからね」
「ああ、それはな」
それは本田も認識していた。実は彼も漫画はよく読んできている。だからその力もわかっているのだ。そうした柔軟さも持っているのだ。
「けれど。漫画はどうなるんだ?」
「漫画はそのまま連載だよ」
こう本田に告げた。
「好評だったから」
「そうか」
「そこに君が帰って来たら鬼に金棒だね」
「任せておけ。ガンガン書いてやるさ」
退院直後とは思えない元気さだった。右手を力瘤にして掲げて自信満々に言う。
「今日からな」
「今日からなんだ」
「いい骨休めになったさ」
満面の笑顔での言葉だった。
「冬休みってやつだ。じゃあ」
「頼むよ」
「ああ」
こうして彼は復帰してまた書きだした。残念だがその年も阪急は巨人に敗れその翌年は何と南海が前期後期に分かれたはじめてのシーズンのプレーオフを制して優勝となった。それにもショックを受けた本田だがそれ以上に彼を襲った衝撃があった。それは。
「おいおい、嘘だろ」
「こんなことになるなんてな」
記者達は皆編集部内のテレビを見て驚きを隠せなかった。テレビでは記者会見が行われていいた。何とそこで西本幸雄が近鉄の監督になるということが発表されていたのだ。
「西本さんが近鉄にか」
「これは想像できなかったな」
「それで本田さんは?」
見れば本田は編集部にはいなかった。彼等はそれに気付いたのだった。
「何処なんだ、一体」
「ひょっとして」
「本田君はもう行ったよ」
小坂が本田を探す一同に告げた。
「もうですか」
「早いですね」
「それだけ彼が驚いているってことだよ」
穏やかにこう一同に語るのだった。
「それはね」
「ああ、何か昨日から凄いそわそわしてられましたね」
「そういえば」
皆彼のその言葉を聞いて納得した顔で頷く。その時は何故そうなっているのかわからなかったのだ。しかしこれでわかった。既に情報を掴んでいたのだ。だからなのだった。
「あっ、ほらあそこに」
「本田さんが」
本田もテレビに映っていた。呆然としながらもメモを取っている。顔は動かないが手は動いているのだった。この辺りは流石だと言えた。
「それで本田さんどうなるのかな」
「どうなるのかなって?」
不意に誰かがこう言って皆そちらに顔を向けた。
「だから。今阪急担当じゃないか」
「ああ」
「けれど西本さんが行ったら。どうなるのかな」
「やっぱ
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