第29話天使と御対面
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しい。
ユイちゃんもお出掛けと聞いて元気よく行くと答え、早速出発の準備に取り掛かった。でもここで一つ問題がーーー
「う〜ん・・・出ない」
さっきからユイちゃんが右手の指を振ってシステムウィンドウを出そうとしてるのだがーーー一向に出ない。出てくる気配もない。装備を変更するにはシステムウィンドウを操作する他なく、普通に着替える事は出来ない。どうしたもんかーーーと考えていたら一つの可能性が頭に浮かんだ。
「ユイちゃん、今度は左のお手てでやってみて?」
「うん」
そんなはずはないと思いたかったけど、ひょっとするとあるかもしれない。そう思ってユイちゃんにやってみるよう言うとユイちゃんがーーー左手でシステムウィンドウを出した。
オレ達プレイヤーは左手でシステムウィンドウを出す事は出来ない。出来るとすればーーー
「ねぇ、ユイちゃんって・・・」
「ああ、もしかしたら運営側の・・・」
運営側の人間、もしくは関係者という事。かつてのデスゲーム開始の日、赤いローブの異形の存在に姿を変えてこの世界にオレ達を閉じ込めた茅場晶彦。彼はその時左手を滑るように動かしシステムウィンドウを表示していた。
オレはユイちゃんの手を拝借してユイちゃんのステータス画面をみんなが見られるように可視モードにした。その画面に書かれていた名前はーーー
「《MHCP―001Yui》・・・?」
「何これ?キャラクターネームじゃないよね?」
「何だかまるで・・・」
「何かのコードネーム、みたいだな・・・」
ユイちゃんのーーー恐らくキャラクターネームなのであろう欄に書いてあるこの《MHCP−001Yui》という何かのコードネームのような文字。《Yui》がこの少女の名前だという事はまだ解る。でもこの《MHCP−001》というのが意味不明だ。本名をキャラクターネームにするケースは少なからず存在する。でも子供がこんなアルファベットと数字の妙な羅列なんてするだろうか。ーーーあの人なら解るかな?
「ありがとなユイちゃん。とにかく早く《はじまりの街》に行こう。この子の記憶を早く解放してあげないと」
ーーーこのユイという名の少女。記憶喪失、言語障害、精神年齢の逆行、そしてキャラクターネーム。様々な謎を抱えている親友夫婦の養子になったこの少女を知るために、オレ達はこのデスゲームの始まりを飾った最初の街に足を向けて歩き出した。
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