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6部分:第六章
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この本田という男を甘く見ていた。彼はそんな男ではなかった。
「来年だ」
「来年ですか」
「そうだ。来年だ」
 いきなりこう言い出すのだ。
「今だから言うぞ。あの山田が打たれたあのホームランはナインの心に刻み込まれた」
「阪急ナインの心に」
「そして何よりも西本さん、そして山田の心に」
 この二人がメインイベンターであった。なおこの山田という投手は実にホームランの打たれることの多いピッチャーとして有名でもある。
「深く刻み込まれた。悲しみを怒りに変え」
「何か何処かの独裁者みたいになってきたな」
「独裁者っていうか変な宗教の教祖か?」
 後輩にも相当なことを思われている本田であった。
「阪急は立つ。今後何があろうともな」
「じゃあ来年も優勝ですか」
「その通り」 
 酔わずともこの絶対の自信があった。酔っているがその発言はいつも通りなのが彼の凄いところであった。
「そして来年こそは巨人に勝つぞ。いいな、小坂」
「ううん、どうだろうね」
 本田の横の席にいた小坂は今の本田の言葉には腕を組んだうえで首を捻る。どうにもわからないといった顔であった。
「そう上手くいくかな」
「それは嫌味か?いや、違うな」
 しかしここで彼はふと気付いた。
「御前はそんなことを言うような奴じゃないな」
「うん。いや、巨人もね」
 ここで彼は持ち前のその冷静な分析を見せるのであった。
「最近もう人材が」
「一杯いるだろうが」
 本田は今の小坂の言葉にむっとなって言い返した。
「あれだけの人材がな」
「皆もうベテランだよ」
 しかし小坂はここでこう言うのだった。
「ベテランか」
「ほら。ONにしろもう三十代だし」
 言わずと知れた王と長嶋だ。やはり巨人といえばこの二人だった。この二人こそが強い巨人の絶対の象徴だったのだ。
「他の選手もいい歳だしね」
「巨人の黄金時代が終わるっていうのか」
「何でも終わりはあるものだよ」
 今度の言葉はこうであった。
「巨人の黄金時代にしろね」
「そうかな」
「そうだよ。まあ来年か再来年かその後か」
 そして言う。
「何時か優勝は止まるよ」
「阪急に敗れてか」
「いや、ひょっとしたら」
 小坂の顔に不吉な影がさした。
「リーグ優勝できなくてそれで」
「そうですよね」
「もう長嶋さんもそろそろ」
 後輩達が今の小坂の言葉に応えて口々に言ってきた。それは本田も聞いていた。
「引退ですよね」
「そうしたらもう」
「何だ、辛気臭いな」
 本田は今のこの沈みかけた雰囲気に活を入れた。そのうえでまたしてもかなり強引に主張する。
「来年の阪急の日本一は巨人を破ってだ」
「はあ」
「そうですか」
「それの前祝いに今日は飲むぞ」
 こう宣言すると。何と大杯を出
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