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第四章

「また何時にも増して過激な記事だな」
「喜びをそのまま伝えました」
 こう上司にも報告する。胸を張って。
「これで駄目なら書き直しますが」
「いや、いい」
 上司はそれはいいとした。
「どうせ書き直しても同じような流れだからな」
「そうですか」
 本田は彼のいる新聞社と読者達からは激情の記者として知られていた。そのあまりにも感情をほとぼしらせた熱い記事が一部にカルト的に受けていたのだ。今では冷静かつクレバーな文体と記事の小坂と正反対でそれでいて人気を二分する名物記者となっていたのである。もっとも彼にとってはそんなことはどうでもよかったのだが。
「このままいく。この方が売れるしな」
「有り難うございます」
「相手は。わかってるな」
 上司は彼の顔を見上げて不敵な笑みを作ってみせてきた。
「御前の大嫌いな」
「わかっています」
 やはりその言葉も強いものだった。
「巨人なんかに負けはしませんよ」
「それを記事にぶつけろ。いいな」
「是非共」
 ここでも激情そのままの返事だった。
「書ききってみせます。阪急の日本一を」
「日本一か」
「阪急は勝ちます」
 これまた絶対の自信をみなぎらせた言葉だった。
「西本さんが。足立が。スペンサーが」
「強いぞ」
 上司はあえて彼に巨人は強いと告げた。
「わかってるな。王に長嶋だ」
「はい」
「小坂は彼等を冷静に分析しているがな」
「あいつは何て言っていますか?」
「言うまでもないだろう」
 返事はすぐでしかも一つだった。
「巨人有利だ。しかも八割以上の勝率らしい」
「それは阪急の勝率ですね」
 やはり負けてはいない。完全に阪急が勝つと思い続けている。
「まあ見てて下さいよ。あいつにも伝えておいて下さい」
「その言葉。信じていいな」
「若し勝ったら」
「勝ったら」
「俺にスコッチの最上級を奢って下さい」
 また随分と図々しい言葉だった。
「その時は」
「おい、俺が奢るのか」
「もうボトル用意しておくべきかと」
「全く。図々しい奴だ」
 口ではこう言っても苦笑いと共に溜息なので本音は違っていた。
「上司にそんなこと言うか。普通は」
「俺は普通ではないんで」
 自分であえて言う。実際のところ普通とはとても言える人間ではないのでこれはあえて自覚して楽しんでいた。彼も中々趣味が悪い。
「是非共」
「ああ、わかったわかった」
 上司もその申し出を受けることにした。心の中ではまあ巨人が勝つだろうと予想もしていたからだ。だからあえて受けることにしたのだ。
「その時はな」
「御願いします」
「阪急が負けたらどうするんだ?」
「その心配はありません」
 また断言する。
「では。今の阪急に資格はありますか」
「さてな
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