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3部分:第三章
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はもう皿には米の一粒もなかった。
「おかわり」
「あいよ」
 皿をカウンターの向こうの親父に差し出しておかわりだった。スプーンはコップの中に放り込んでいる。
 すぐにそのおかわりが来てそれをまたかき込む。かき込みながら言う。
「それでもな。弱いのは今のうちだけだ」
「今にってことかな」
「ああ。俺は阪急担当だ」
 それを出してきた。彼の誇りでもある。
「だからキャンプも取材に行ったがな」
「どうだったの?」
「凄いぜ」
 小坂に顔を向けて不敵な笑みを浮かべてみせた。
「あれは絶対に強くなるな」
「そんなに凄いんだ」
「いつか阪急はパリーグの王者になる」
 断言だった。
「西本さんの手でな」
「じゃあ巨人とシリーズで戦うのかな」
 小坂の食べ方は穏やかだった。本田のそれとは完全に正反対である。
「やっぱり」
「そうだな。その時巨人の黄金時代は終わる」
 またしても断言だった。その断言には絶対の自信がある。
「そして阪急が球界の盟主になるんだ」
「ふうん」
「御前には悪いがな」
「ああ、別にいいよ」
 親友の言葉を笑って受け止める。
「栄枯盛衰だからね」
「何だ、物分りがいいな」
「そういう巨人ファンだっているよ」
 微笑んで彼に答える。
「巨人ファンってのは宗教じゃないし」
「いや、あれは宗教だろ」
 自分のことは棚に上げての言葉だった。
「巨人が絶対の正義だっていうあの考えはな」
「まあそういう人もいるね」
「長嶋が何だっていうんだ」 
 またこの発言だった。
「西本さんも立教だぞ。長嶋だけじゃないんだよ」
「それと大沢さんも杉浦さんもだよね」
「ああ、そうだ」
 また断言だった。
「立教だけでも結構いるんだがな」
「長嶋さんはまた特別みたいになってるね」
「面白くない」
 二杯目のカレーも殆どなくなっていた。食べるのが相当に速い。
「巨人巨人ってな。巨人の何がいいんだ」
「じゃあ阪急とのシリーズは」
「決まってるだろ。阪急が絶対に勝つ」
 これまた確信だった。己の予想が外れるとは全く考えてはいない。
「その時はな」
「じゃああれかな」
 小坂はそれを聞いてぽつりと語るのだった。
「その時は僕と本田君で」
「対決だな。負けないぜ」
 本田もニヤリと笑って言葉を返す。
「我が阪急はな」
「いや、君と僕の記事の対決のことだったんだけれど」
「それは正直あれだろ?」
 急に言葉が穏やかなものになる。それまでの暑苦しいまでのアグレッシブさが消えた。
「どっちかの勝ち負けによって大きく左右されるさ」
「そんなものかな」
「そんなものなんだよ」
 またしても強引な論理のもって行き方だった。
「だからだ。阪急が勝てば」
「君の記事が勝つってわ
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