暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十一話 脆い心、幼い心
[5/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
年前から今まで、ずっと眠りについてる」

「え……」

 掠れるような声。

 それと同時に、フェイトの表情から血の気が引いていく。

 そしてこの記憶と現実に触れることで、俺の胸の中にあの頃の痛みが蘇る。

 胸の中にポッカリと穴が空いた感覚。

 その周囲をやけどのような痛みが襲う感覚は、慣れないな。

「色んな医者に相談したよ。 専門外の医者、他世界の医療技術、投薬や魔法による治療。 色々ためしたけど、姉さんの身体がガリガリにならないようにするのが精一杯だった」

 すぐに退院できて、唯一生還したのが、俺だった。

 なんで?

 その問いに答える言葉があるとすれば、『運が良かった』としか言い様がない。

 運良く両親ほど深い傷ではなく、姉さんほど重症にならずに済んだ……それだけのことだった。

「俺が海鳴に来たのは、長期休暇が目的だったんだ。 俺たち一家をこんな目に遭わせた犯人の捜索、それの代償に管理局で働いていたから、疲労回復や、学生らしい生活を送ること。 そして、今も眠りについてる姉さんの側にいること。 姉さんが起きたとき、いち早く駆けつけられるように」

 結局のところ、それが一番大きな理由だった。

 姉さんが心配で、姉さんがまだ生きてるってことを実感してくて、姉さんの側にいたくて。

 そんな甘えたい感情が、俺をこの世界に送ったのかもしれない。

 艦長から休暇を貰わずとも、俺は結局こうしていたんじゃないかなって、今はそう思う。

「そう、だったんだ……」

「うん、そういうことがあったんだ」

 言い終えて、俺は壁に取り付けられた時計を確認する。

 時刻はすでに日付を跨いで朝の四時。

 なるほど、通りで眠いわけだ。

 どのみちフェイトの監視も含めて学校は休む予定だったし、明日からは土日だから一日休んだって構わないだろう。

「ありがとな、わざわざ話を聞いてくれて」

 本来であれば話すべき相手ではない。

 フェイトだって、自分が聞いていい相手でないことくらいわかってただろう。

 けど、彼女なりの気遣いに甘えてしまった。

 今までの俺らしからぬ行為に、俺自身が驚いてる。

(相当キテるんだな、俺……)

 さっきの、柚那の言葉があまりにも俺の胸を抉った。

――――『アンタは絶対に許さない。 ずっとお姉ちゃんを苦しめた、アンタだけは!!』

 柚那の怒りの意味を、俺はすぐに理解した。

 だけど、雪鳴が苦しんでいたってことを、今更理解した。

 もっと早く気づければ、こんなことにはならなかったのだろう。

 柚那を怒らせ、雪鳴を苦しめることもなかった。

「後悔先に立たず、か」

「え?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ