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14部分:第十四章
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もうすぐだ。もうすぐ」
「阪急の日本一だね」
「なあ小坂」
 今度は本田が小坂に声をかけてきた。
「何かな」
「これからも。ずっと野球を見ていこうな」
 親友への言葉だった。
「やっぱり野球は最高だよ」
「そうだね。そこに感動があるから」
「泣く時もあれば笑う時もあるけれど」
 今度はこう表現する。実際に彼はもう泣きかけていてそれでいて微笑んでいた。二つの相反するものが混ざり合ってそのうえ調和している、不思議な顔だった。
「それも感動があってだからな」
「感動だね」
「ああ、やっぱりそれだよ」
 またそれを言った。
「それがあるから」
「さあ、いよいよ最後のバッターだね」
「そうだな。長かった」
 感慨が、今までの感慨が本田の心の中を占めていっていた。
「西本さんは笑顔にはならないだろうけれどそれでもな」
「感謝してるんだね」
「当たり前だろ。西本さんが強くされたチームだ」
 阪急は何といってもそうだった。かつては弱小球団に過ぎなかった。巨人と日本一をかけて戦うなど夢の話だった。しかしその阪急が黄金時代の巨人に向かいそして今こうしてその巨人を倒そうとしている。本田はそのことに感動を覚えたまらなかったのだ。
「今は敵だけれどな。それでも」
「そうだね。やっぱり見ているだけでね」
「そうだよ。とにかくもうすぐだ」
 言いながらグラウンドを見続ける。
「感動だよ」
「日本一じゃなくて」
「感動だ」
 やはり出る言葉は感動だった。
「感動が待っているからな」
「うん」
 そして遂に。試合が終わった。阪急ナインは笑顔でマウンドに駆け寄り抱き合う。今阪急が日本一になった、感動の瞬間だった。
「やった!」
「やったぞ!」
 ナインもファン達も笑顔だ。喜びを爆発させる。しかし本田は。その中でただ静かに泣くだけだった。一人で座って静かに泣いていた。
「やったよ・・・・・・・本当に」
「そうだね。巨人を破って日本一になったよ」
「五回も敗れてやっとな」
 かつての記憶が蘇る。走馬灯そのままに。
「日本一か。巨人を倒したんだ」
「ほら、上田さんが」
「ああ、そうだな」
 胴上げだった。上田が胴上げされている。試合がはじまる前は不安げだった彼が今は笑顔で胴上げされている。後楽園にその細い身体が舞っている。
「勝ったんだよ、今」
「インタビューに行こう」
「インタビュー?」
「僕達の仕事じゃないか」
「あ、ああ」
 はたと気付く。言われてやっとだった。
「そうだったな。俺達の仕事だ」
「そうだよ。だからもう」
「わかったよ。それじゃあ」
 小坂に促されて立ち上がる。二人の動きは小坂の方が早かった。
「行くか」
「上田さん何て言うかな」
「御前は長嶋さんに行かないといけない
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