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13部分:第十三章
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たこと」
 こう言った。今度は。
「そのことだけで喜んでくれる人だよ」
「皆、西本さんが育てた選手」
「ああ」
 また小坂の言葉に頷いた。試合はさらに週末に向かっていっている。終わりが間もないのは誰の目から見ても明らかだった。日の光は夕陽に近付いてきており影が長くなってきていた。秋の落ちるのが早い日が告げていたのだ。試合が終わるのが近いと。阪急の日本一が近いと。今そこにいる全ての者に伝えていたのだ。
「皆な。よくやってくれているよ」
「ねえ」
 小坂はまた本田に声をかけてきた。
「西本さんの時には一度も日本一になれなかったね」
「そうだな」
 それは事実だ。それだけはどうしても無理だったのだ。
「けれど今の阪急は」
「西本さんが作り上げたチームだ」
 まずはこう答えた。
「そして」
「そして?」
「日本一のチームだ」
 次の言葉はこうであった。
「西本さんが作り上げらた日本一のチームだ」
「日本一のチームを作り上げるのと日本一になるのはどっちが難しいかな」
「さあな」
 これについては彼も答えられなかった。こう聞かれるとどうも迷ってしまうのだ。実際のところどちらも難しい。どちらとは言えないものがあるのだ。
「西本さんはひょっとしたら」
「ひょっとしたら?」
「近鉄も優勝させるかもな」
「近鉄も」
「あと何年かかるかわからないがな」
 三年後この言葉は的中する。西本は自分が率いたチームを全て優勝させるという偉業を成し遂げたのだ。やはり彼は名将なのだ。

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